亡くなった井筒親方(元関脇逆鉾)の弟子、西序二段8枚目鶴大輝(かくたいき、28=井筒)がこの日、師匠にささげる白星を挙げた。1勝3敗で迎えた5番相撲で、森を立ち合いから一気に2本差し、電車道で寄り切った。

鶴大輝は「やっぱり師匠が…」と言うと絶句した。「師匠のために最後はバシッと決めて。天国で多分見てくれているはず。情けない相撲はとりたくない。教え通り、一発勝負のもろ差しで、と思ってました」。あふれる涙をぬぐって「いつもは“もうちょっと、ああだったら”とか言われるんですが、今日ぐらいはもしかしたらほめてくれるかもしれません」と言葉をつないだ。

井筒親方が死去した時、入院先の病院にいた。「はじめ(場所前)から知ってたんで。相撲なんかとってる場合じゃない、とも思いました。(06年春場所の初土俵から)世話になった相撲の父ちゃんですから。自分にとっては最高の親方でした」。

名古屋場所後、井筒親方に「おまえ、ちょっと体たるんでるな。8月いっぱい、しっかり運動して、勝ち越して三段目に戻らないとな」と言われたのが、最後の言葉だったという。

「僕らを尊重して、やりたいことをやらせてくれて、遊びに行くなら、行けと。飯もよく連れて行ってもらいました。息子みたいにかわいがってくれて、いつも“ダイキチ、ダイキチ”って呼んでくれて。おやじって、ウザいなと思ったこともあったけど、やっぱり大好きです」

前夜は夢に井筒親方が出てきて、にこにこ笑っていたという。「やっぱり、そういうの見ちゃうんですね」と言い「自分の師匠はあの人だけ。長男が(東三段目37枚目)鋼(はがね)さんで、次男が横綱(鶴竜)で、三男坊で言うことを聞かない僕がいて」。いつまでも師匠の死が信じられない様子だった。