関脇御嶽海(26=出羽海)が2度目の賜杯を手にした。

貴景勝、隠岐の海と並んで優勝争いトップで迎えた千秋楽、本割で遠藤を下して12勝3敗とし、優勝決定戦で貴景勝を下した。白鵬、鶴竜の両横綱を除いた現役力士で初めての2度目の優勝。次世代を担う若手の中、昨年名古屋場所で最初に優勝を飾った男が、またもライバルたちに1歩先んじた。

御嶽海は今場所も、自分のスタイルを貫いた。

人前で稽古はしない。「見られると嫌。集中できない。別にそれ(全体の稽古)がすべてじゃない」。やるなら1人でやる。他の力士が昼寝する間に稽古場に下り、汗を流す。

ジム通い、筋トレはしない。東洋大2年の時、某有名ジムに3カ月ほど通って、止めた。相撲の動き、キレがおかしくなった。「最初は“かっこいい、俺も筋肉つけよ”と思ったけどね」。以来、自重を使うトレーニング専門だ。「結局、この範囲だけあれば十分なの」と両手を広げ、2~3メートルのスペースを示す。

対戦相手の映像は一切見ない。「他人に興味がない」。ただ、それが理由のすべてじゃない。対戦経験のある力士なら体で知っている。初顔合わせでも、支度部屋など日常的に姿や動きは見た。何より土俵上で、見て、感じるものが大事。「映像で情報を入れたくない。信じるのは自分の感覚」という。

流されない。今場所は2日目から白鵬、中日から鶴竜と両横綱が休場した。当然、貴景勝や自分に優勝争いの注目が集まったが「主役は他にいっぱいいるじゃん?」。過去16場所在位した三役で1度だけの10勝以上にノルマを絞った。大関、横綱への道は何か? 「横綱は(場所に)出たら2桁勝つでしょ? だから、すごい」。11、12勝をコンスタントに稼ぐ自分になる-。優勝争いより、土台作りが断然大事だった。

御嶽海は自分の理屈を展開する時、忘れず最後に付け加える。

「人それぞれ。僕に合ってるか、どうか」

他人のやり方を否定しない。むしろ自分をまねて欲しくない。若手と呼ばれる力士の中で、最初に初優勝を飾り、三役連続在位は歴代2位の16場所。その“理由”を探ってほしくない。

先場所9勝と今場所12勝を受けて、九州場所は流れ次第で大関取りになる可能性がある。昇進目安「直近3場所を三役で33勝」は12勝でクリアできる。自分の流儀を貫く“異端児”に勝負の時が来た。