大相撲の関脇貴景勝(23=千賀ノ浦)が、大関に復帰する九州場所(11月10日初日、福岡国際センター)の出場危機に陥った。

敗れた関脇御嶽海との優勝決定戦で負傷した、秋場所千秋楽から一夜明けた23日、都内の病院でMRI検査を受け「左大胸筋肉離れ」で、加療6週間と診断された。師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)が明かしたもので、手術はしない方針。大関陥落の原因となった右膝のケガに次いで、再び試練を迎えることになった。

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正午ごろに部屋を訪れた貴景勝の表情は、険しかった。約20分後に部屋を出た際も、報道陣の問いかけに「そっとしておいてください」とだけ答え、迎えの車に乗り込んだ。沈痛な面持ちが、事態の深刻さを物語っていた。一方で、1度去った後、用事を思い出したのか、数分して再び部屋の前に現れた際は、車の窓を開けて報道陣に手を振って引き揚げた。悔しさと、次を見据えた心境が混在していることを物語っていた。

前日22日の秋場所千秋楽は、本割で前頭隠岐の海を破って12勝3敗としたが、優勝決定戦で御嶽海に敗れた。優勝決定戦の立ち合いで、左胸を痛めたとみられる。取組後は呼吸を乱し、苦痛に顔をゆがめていた。この日、MRI検査を受け「左大胸筋肉離れ」で、加療6週間と診断された。

5月の夏場所で右膝を痛めて途中休場し、7月の名古屋場所は全休。大関から陥落も、秋場所は10勝以上の規定を12日目にクリアして1場所での返り咲きが決まっていた。千賀ノ浦親方は「一安心したところで、まさかこういうことになるとは」と、弟子の無念を代弁した。10月の秋巡業は全休の見通し。復帰が来年初場所ならかど番、春場所なら再び関脇に転落する。

千賀ノ浦親方は「手術はしない方向」と明かした。肉離れは筋肉の部分断裂。元横綱稀勢の里は左大胸筋断裂が完治せず、今年初場所で引退に追い込まれた。同親方は「下半身を鍛えることはできる」としながらも「時間が必要」と、劇的に復帰が早まる可能性は否定。力士生命にかかわるケガの可能性もある。それだけに九州場所出場について同親方は「それはまだ分からない」と慎重に話した。【高田文太】