日本相撲協会は26日、東京・両国国技館で理事会を開き、西十両5枚目の貴ノ富士(22=千賀ノ浦)に、自主引退を促すことを決議した。事実上の引退勧告となる。貴ノ富士は8月31日に付け人の序二段力士に暴力を振るっただけでなく、5~7月にかけて若い衆に差別的発言を繰り返していたことも明らかになった。決議に同意しなければ、協会コンプライアンス委員会の追加答申を受け、臨時理事会で処分を決定する。貴ノ富士は27日に会見する。

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貴ノ富士への処分は出なかった。コンプライアンス委員会から処分案として引退勧告を答申された理事会は「引退やむなしとの意見でまとまった」。しかし、日本相撲協会が発表した文書によれば「貴ノ富士が22歳と若く、今後の人生が長いことを考慮し、懲戒処分の引退勧告ではなく、貴ノ富士に自主引退を促すことを決議した」。事実上の引退勧告で、同意しない場合は、コンプライアンス委に追加答申を委嘱。引退勧告、懲戒解雇といったより重い処分を科すとみられる。

理事会には貴ノ富士、師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)、双子の弟で幕内力士の貴源治が呼ばれた。自主引退を促されると貴ノ富士は「考えます」と答えたという。25日に理人弁護士を通じてスポーツ庁に、24日は相撲協会に書面で寛大な処分などを求めた。現役続行を模索しているとみられる。

相撲協会によると、貴ノ富士は5~7月ごろ、千賀ノ浦部屋の弟弟子4人(序二段3人、序ノ口1人)に差別的な発言などを繰り返した。それぞれ「ニワトリ」「ヒヨコ」「地鶏」とあだ名を付け「おい、ニワトリ」と声をかけた際に「はい」と返事をすると「はいじゃない。コケと言え」と強要。8月31日の稽古総見後、付け人が自分よりも先に風呂に入り「先に風呂に入って『お先ごっつぁんです』もないのか」と右手の拳で額を1回殴打。殴られた付け人は額にこぶができ、数日間痛みが残った。

昨年3月に付け人を殴って1場所出場停止処分を受けた貴ノ富士は同年12月、再び暴力を振るった場合は引退する旨の誓約書を師匠に提出していた。退職金が減額される懲戒処分を科さなかったことについて、芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「理事会として1つの温情を出した」と話した。協会は謹慎が継続中と認識する中、貴ノ富士は27日に会見を予定。貴ノ富士の代理人は「到底納得できる処分ではない。法的視点から処分の不当性を訴える」とのコメントを発表した。