大相撲の西十両5枚目の貴ノ富士(22=千賀ノ浦)が、自主引退を促す通達を受けた日本相撲協会の理事会から一夜明けた27日、東京・千代田区の文部科学省で会見を行った。

事実上の引退勧告を「受け入れられません」とし、現役続行を希望した。差別発言などについては認める一方、協会の暴力根絶への取り組みは不十分だと指摘した。法的手段については明言を避け、問題が長期化する可能性が出てきた。

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自主引退を促されても、会見を開いた理由は単純明快だった。現役続行と相撲協会の組織改善、どちらを強く求めるかという質問。貴ノ富士は「もちろん土俵に戻りたい気持ちが強い」と即答した。理事会で自主引退を促され、それを受けなければ引退勧告や懲戒解雇が濃厚。引退以外の道を模索していた。「今回の処分はあまりにも重く、受け入れられません」。師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)に止められても強行した会見の冒頭で力説した。

付け人の序二段力士への暴力は認め「自分としては自覚が足りなかった。ゲンコツなら、という甘い考えでいた」と反省した。被害者力士の実家に謝罪したい意向も示した。ただし「もちろん重く、強くたたいたつもりはない」という。暴力直後に部屋のおかみさんが確認した際の言葉として「赤くなっていなければ、たんこぶもできていなかった」とし「額にこぶができ数日間痛みが残った」という協会発表に反論した。

差別的な発言も認めた。これも「言い過ぎたと思っている」としながら、兄弟子から踏襲した言葉と明かした。昨年春場所中の付け人への最初の暴力が契機でもある、研修など暴力問題対策は「正直(協会員に)伝わっていない」。さらに「手を出さない代わりに、どういう風に指導していくか教えてもらっていない」と指摘した。

法廷闘争の可能性については協会次第だとして出方を見るという。一方の相撲協会の芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「(自主引退を)受け入れるのか受け入れないのか、意思は本人から言うべき」と話した。問題は当面、停滞しそうな気配だ。