日本相撲協会は16日、呼び出しの最高位となる立呼び出しの拓郎(63=春日野、本名・花里拓郎、北海道札幌市出身)が、10月8日の新潟・糸魚川巡業で、後輩の呼び出し2人に対し暴力をふるい、前日15日に本人から退職届が出されたと発表した。退職届は預かりとし今後、コンプライアンス委員会の調査を待つという。

同協会の芝田山広報部長(元横綱大乃国)によると、8日午前7時ごろ、巡業会場となった新潟・糸魚川市民総合体育館のイス席に座り弁当を食べていた序二段呼び出しに対し「なぜ、こんなところ(観客席)で食事をしているんだ」と口頭で注意するとともに、その若手呼び出しの頭部を、こぶしで1回殴ったという。その後、近くにいた幕下呼び出しにも「兄弟子が見ていて、なぜ注意しないのか。しっかり見てやらんか」と注意しながら、背中を1回たたいたという。2人にケガはないという。

その幕下呼び出しが協会職員に報告。巡業部の入間川親方(元関脇栃司)に連絡が入り、同親方から春日野巡業部長(元関脇栃乃和歌)に通報された。同部長は、ただちに拓郎ら当事者を呼び事情聴取し、大筋で確認できたため、鏡山コンプライアンス部長(元関脇多賀竜)に報告された。事情聴取の場で拓郎が2人に謝罪。拓郎に対しては自宅謹慎という暫定措置がとられた。

その後、拓郎から「協会が暴力の根絶に取り組んでいる中、呼び出しトップで指導する立場にありながら後輩の呼び出し2人に暴力をふるい、たいへん申し訳ありません。退職して責任を取りたい」との意向が示され、15日に退職届が出されたという。

協会はこれを預かりとし、八角理事長(元横綱北勝海)はコンプライアンス委員会(青沼隆之委員長)に事実関係の調査と、処分意見の答申を委嘱。それまで拓郎は謹慎とし、退職届を受理するか、懲戒処分とするかなどは、今後の調査を待って決める見通しだ。

また今月下旬に開催される見通しの臨時理事会では、先に引退届を受理した元十両貴ノ富士と、この拓郎との事案を踏まえ、コンプライアンス委員会の意見を参考にしながら、再発防止策の強化を検討し、11月の九州場所後までに強化策をとりまとめる方針という。

拓郎は1975年(昭50)春場所前に採用された。13年10月に、三保ケ関部屋の閉鎖により春日野部屋に転属。15年九州場所で、副立呼び出しから立呼び出しに昇格した。14年九州場所限りで秀男が定年退職し、立呼び出しは不在だったが、1年ぶりに最高位として復活。その九州場所で日刊スポーツの取材に「全体をみて全責任を負う立場。45人(呼び出しの定員)しかなれないのだから誇りを持ってやりたい。『拓郎の呼び出しで気合が入るよ』と横綱から言葉をかけられるのが夢」と話していた。