「おきゅう効果」で波乱の使者となるか。小結阿炎(25=錣山)が、北勝富士(八角)を一直線に突き出し、6勝目を挙げた。これまで立ち合い変化や引き技が目立った相撲からの脱皮に八角理事長(元横綱北勝海)は「場所前のおきゅうが効いたかな」。インスタグラムへの不謹慎な投稿で初日前日に理事長に謝罪。その反省を土俵上で示し、1敗の横綱白鵬(宮城野)戦を残すだけに楽しみな存在となってきた。小結朝乃山(高砂)が2敗を守り、勝ち越しを決めた。

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横綱が賜杯へ突き進む中、終盤にひと波乱起こすかもしれない。すでに4敗を喫しているが、阿炎が調子を上げてきた。北勝富士を立ち合いから一直線で突き出し。「(相手の上体を)起こしてなんぼと思ってるんで、起こせてよかった」。これまで勝利優先が目立った相撲が、今場所は一変。正攻法に徹している。

変わりっぷりを評価したのが八角理事長。「場所前のおきゅうが効いたかな」。場所前、インスタグラムへの不謹慎な投稿がSNSで拡散。“炎上騒動”を起こし、理事長に「土俵で目立ちなさい」と指摘されていた。反省の気持ちを示すような攻める相撲。理事長は「相撲が変わったというか、今までは勝てば何でも一緒だったけどね。勝っても負けても前に出ればいい。看板力士なんだから」と言った。

阿炎も自信をつけている。この日は回転ではなく、下から押し上げる突きを「やってみよう」。それは上位陣としての自覚でもある。「(武器が)引き出しに2個ぐらいしかないんでね」は幅を広げたい意識の表れだ。

連日、支度部屋での決まり文句が「疲れた…」。その心を「一番にかけてるんで。体より気持ちの面で疲れるんです」。それを癒やすのが「プッチンプリンです」と明かす。部屋でちゃんこをしっかり食べるため、甘い物の購入は禁止。差し入れ限定で食べられる。その貴重品を「プッチンしません。上からすくって最後にカラメルと混ぜて飲む」と笑わせた。

豪快さは爆発力を感じさせる。対戦を残す白鵬の独走に待ったをかけるか。注目の男に浮上してきた。【実藤健一】