横綱稀勢の里の引退に始まり、新大関貴景勝誕生、トランプ米大統領観戦、暴力問題で十両貴ノ富士が引退など、さまざまな出来事が起きた2019年の大相撲。今年1年間、幕内を務めた全29人の力士が対象の連載「第8回日刊スポーツ大相撲大賞」は、そんな陰で生まれた好記録や珍記録を表彰する。ラグビーワールドカップが盛り上がった今年の第1回は「ワンチーム賞」。ラグビー日本代表のスローガン同様、自身初の幕内優勝を筆頭に、部屋に最多5度の各段優勝をもたらす一体感を生み出した小結朝乃山(25=高砂)が受賞した。

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大関候補の朝乃山が名門高砂部屋を「ワンチーム」にまとめた。新語・流行語大賞の言葉を用いた今年ならではの賞だが、4力士で5度の各段優勝は力士数、優勝回数とも部屋別最多。朝乃山は「プロはアマチュアと違って団体戦はないので」と、個々の頑張りだと謙遜するが、周囲はそう思わない。春場所で序ノ口、名古屋場所で三段目優勝の幕下寺沢は「朝乃山関を見てああいう風になりたいと思った」と、相乗効果を口にした。

今年の朝乃山の飛躍は目覚ましかった。夏場所は12勝3敗で初優勝。新設された米大統領杯のトロフィーを、トランプ氏から受け取った。直後の名古屋場所は、初の上位総当たりで7勝8敗も、場所前には横綱白鵬のもとに出稽古。貪欲に強さを求める姿は周囲をさらに刺激し、新小結の11月九州場所で優勝次点の11勝など、結果も出した。

初の年間最多勝は、最高位が小結以下の力士としては初、関脇以下でも大鵬、貴花田に次ぐ3人目の快挙だった。初場所は三段目で朝弁慶、秋場所は序ノ口で村田が優勝。九州場所の序二段優勝決定戦で村田が敗れ、朝乃山は「勝ってれば部屋で全6場所優勝だったのに」とちゃかす。そんな和やかな雰囲気づくりができるのも「ワンチーム賞」の要因だ。【高田文太】