横綱稀勢の里の引退に始まり、新大関貴景勝誕生、トランプ米大統領観戦、暴力問題で十両貴ノ富士が引退など、さまざまな出来事が起きた2019年の大相撲。今年1年間、幕内を務めた全29人の力士が対象の連載「第8回日刊スポーツ大相撲大賞」は、そんな陰で生まれた好記録や珍記録を表彰する。

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本場所会場まで移動時間が最も長い「通勤が大変で賞」を獲得したのは、大方の予想通り? 前頭明生(24=立浪)だった。茨城・つくばみらい市の部屋から東京・両国国技館まで、電車で往復2時間。大阪の春場所、名古屋場所、九州場所の宿舎からは車で、マップアプリなどを駆使して計算したところ総時間は8670分=約145時間。明生は「遠いと思っていた」と、苦笑いを浮かべながら、納得した様子だった。

東京場所では、立浪部屋の関取衆は明生以外も電車を利用。他部屋の関取と違って車で移動しないのは「渋滞が怖いから」。部屋から国技館方面へ向かう夜の常磐自動車道はよく混むそう。「毎日同じ時間に着くからリズムも一定になる」と、ルーティンを崩さない意図もある。

ここ数場所の活躍で知名度が上がったためか、電車では幅広い年齢層のファンに声をかけてもらう機会が増えた。九州場所では自己最高位の西前頭2枚目。年間で最も決まり手の多い「年間彩多賞」も受賞した。三役目前のブレーク候補は「今年はまずまずだったので来年はさらに飛躍したい」と誓った。【佐藤礼征】