人気力士で東前頭筆頭の遠藤(29=追手風)が、戦後3人目の快挙を果たした。

2場所連続優勝を狙う横綱白鵬を切り返しで破り、初日の鶴竜戦に続く金星を獲得した。初日から2日連続の金星は99年秋場所の栃東以来、戦後3人目。先場所まともに食らったかち上げに対応して波乱を演出した。貴景勝、豪栄道の両大関も敗れたが、横綱鶴竜が今場所初白星を挙げて横綱、大関の総崩れを防いだ。

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土俵上で座布団が舞う。観客の興奮は収まらない。勝ち名乗りを受けて土俵下に降りた遠藤に、異様ともいえる「遠藤コール」が送られた。鳴りやまない拍手と歓声。この日の主役は「うれしかったです」と短い言葉で感謝した。16年九州場所以来2度目の白鵬戦勝利で、自身6個目の金星を獲得した。

左で張って、右のかち上げ-。先場所と同じ立ち合いで突っ込んできた白鵬を、今度は攻略した。前回はかち上げに加えて張りも数発食らい、鼻付近から流血。横綱審議委員会(横審)も問題視する激しい立ち合いに屈し、自ら倒れ込むようにして敗れた。今回は張られると左に動き、いなしてかち上げの直撃を回避。回り込んで左を差し、がっちりまわしをつかんで横向きにさせた。苦し紛れに上手投げを打つ横綱を、切り返しであおむけに倒すと、紅潮した顔で1度うなずき、舌をぺろりと出した。

立ち合いの工夫を問われると「しっかり集中して当たっただけ」。感情を表に出さない男は努めて冷静に答えたが、勝負が決した瞬間の表情が、対策の手応えを何よりも物語っていた。

小結だった昨年九州場所は7勝8敗で負け越し、3場所ぶりに平幕で出直す場所で戦後3人目となる初日から2日連続の金星と、これ以上ない滑り出しとなった。昨年10月の秋巡業で、同年5月に一般女性と結婚していたことを明かした。「支えてもらっている」としながら、出会いのきっかけや交際期間については「芸能人じゃないからね、力士は」と私的な話はほとんどしない。「土俵の上で相撲を頑張る姿を見せられたらいい」と、自身の力士像を貫く。

13年に幕下付け出しでデビューし、スピード出世と甘いマスクで相撲人気の一端を担う。10月には30歳となる角界の人気者は「また明日から頑張る。集中して相撲を取れたらいい」と、飾らない言葉で結んだ。【佐藤礼征】