新型コロナウイルスの影響で、史上初の無観客開催となる大相撲春場所初日を翌日に控えた7日、会場のエディオンアリーナ大阪で、土俵祭りが行われた。感染防止のために通常は参加する横綱白鵬ら三役以上の力士の姿はなく、一般客もなし。八角理事長(元横綱北勝海)や審判部の親方衆などが出席した。濃厚接触を避けるために、出席者が順々にお神酒を口にする儀式だけがなく、それ以外は厳かな雰囲気の中で行われた。高島春場所担当部長(元関脇高望山)は「1人も(感染者が)出ないことを祈った。無事に千秋楽を迎えたい」と切に願った。

日本相撲協会による感染予防策が、あらゆる所に敷いてある。この日までに協会はマスク3000枚を用意。さらに消毒スプレーを350本、会場内に設置する除菌消臭液を噴霧する器機も約20台購入した。報道陣の会場入りの際には検温が必須で、会場内の席で取組を見る際も記者同士の間隔を左右2席、前後1列空けるように要請。協会員から1人でも感染者が出た場合は中止となるだけに、細心の注意を払っている。

土俵祭り後に協会員らで行われた会議で、本場所中に理事の親方衆が観客席で取組を見守ることが決まった。芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「力士らも引き締まるだろうと。緊張感が出るから」と、力士のモチベーションを上げる策であることを明かした。この日まであらゆる対応に追われてきたが「ここまで準備しても気が抜けない」。異例の場所が、いよいよ始まる。

<春場所の主な変更点>

◆完全無観客 相撲協会員と報道陣、一部の業者以外、会場は一切立ち入り禁止。特に土俵周辺から升席までは力士、親方、行司、呼び出しら協会員しかいない。報道陣が土俵を直接見るには、後方のいす席の所定位置への着席が義務。

◆打ち切りの可能性も 協会員が新型コロナウイルスに感染したと判明した場合、即座に中止。その場合の成績の取り扱いは未定。

◆2日連続発熱で休場 力士ら協会員の検温は朝、夜の1日2回。37度5分の熱が2日続けば休場。報道陣も会場入りの際に検温し「検温済証」が渡される。

◆風物詩が激減 のぼりや開催を告げる触れ太鼓は取りやめとなった。懸賞も昨年春場所と比べて半減。

◆移動はタクシーか自家用車 力士ら協会員の会場への行き来は原則、公共交通機関を利用しない。タクシー代は全額協会が負担。

◆会場入り後の外出は禁止 1度会場に入った協会員は、食事や買い物など、理由を問わず外出は不可。忘れ物厳禁で、食事などはあらかじめ購入して入場。

◆会場への差し入れ、出前は不可 部外者は会場にいる関係者に差し入れ、出前など接触することはできない。各部屋への差し入れは、従来通りにできる。

◆ファンは接触不可 ファンの入り待ち、出待ちはできない。警備員が接触できないよう定期的に巡回。