日本相撲協会は10日、玉ノ井部屋の十両富士東(33)と幕下以下の力士17人が新型コロナウイルスに感染したことを発表した。5日に同部屋の幕下以下の力士1人の感染が判明。同部屋所属の協会員32人の検査を実施したところ、この日までに新たに力士18人の感染が判明した。同部屋の感染者は計19人となった。

師匠の玉ノ井親方(元大関栃東)や十両東龍らは陰性だったが、協会は感染拡大防止のため、審判委員を務める同親方と部屋に所属する力士28人全員の秋場所(13日初日、東京・両国国技館)全休を決定した。報道陣の電話取材に応じた芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「陰性の人もいるけど、部屋の中のことだから全員をロックアウトする」と説明。部屋を構える足立区は、同一施設で5人以上の感染者が短期間で発生したことから「集団感染(クラスター)として公表する」とクラスター認定した。

感染者19人のうち12人はすでに入院している。ほか7人は無症状だが今後入院する予定で、重症者はいないという。全休となる力士の成績に関して同広報部長は「審判部が場所後の番付編成会議で決めること」と前置きし「何らかの形はとらないといけない。感染したことが悪い訳ではない」と救済措置が取られる可能性を示唆した。

角界では4月に高田川部屋で、師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)や十両白鷹山らが感染した。三段目の勝武士さんが5月に死去するなどし、協会は感染防止策を強化してきた。各部屋に外出自粛を求め続け、出稽古禁止の中で発生した集団感染。芝田山広報部長は「ウイルスは目に見えるものではない。こういう風になったのは仕方ない」とあらためて、感染対策の難しさを口にした。

2日後に秋場所の初日を迎える。同広報部長は「開催に関して全く問題ない」と明言した。他の部屋で体調不良を訴える者はおらず、本場所開催における感染防止策も整っているとした。【佐々木隆史】

 

◆玉ノ井部屋 1977年(昭52)初場所後に引退し、年寄「玉ノ井」を襲名した元関脇栃東が、90年に春日野部屋から独立して創設。実子の現師匠で元大関栃東が、父の定年退職に伴って09年に年寄「玉ノ井」を襲名して継承。秋場所番付で、関取は十両東龍、富士東の2人。幕下以下の力士を含め、全44部屋で3番目に多い力士28人が所属。他の協会員は行司1人、呼び出し1人、床山2人、世話人1人。所在地は東京都足立区西新井