大関貴景勝(24=千賀ノ浦)が“婚約場所”を好発進した。7月場所を制した東前頭筆頭照ノ富士を立ち合いから圧倒して押し出し。3年ぶりに顔を合わせた大関経験者を黙らせた。場所前に婚約を発表した勢いそのままに、2度目の賜杯を目指す。もう1人の大関、朝乃山は小結遠藤に敗れて黒星発進。両横綱の休場で出場最高位となった両大関は、明暗が分かれる初日となった。

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貴景勝の低く、鋭い当たりが戻ってきた。下から上に突き起こすこと5発。上手を求める照ノ富士が、なすすべなく土俵を割った。両横綱の休場で今場所を最高位として臨む大関と、2場所連続の優勝を狙う大関経験者という注目の一番。ふたを開けてみれば、貴景勝の完勝だった。

公私ともに充実させる。場所前の8月30日に元大関北天佑の次女で元モデルの千葉有希奈さん(28)との婚約を発表した。心機一転するように締め込みも黒色に新調。リモート取材に応じず意図は明かさなかったが、無言で国技館を引き揚げて集中力を高めた。

私生活では伴侶を得たが、部屋頭としては“おとこ気”を示す。8月に猛暑を考慮して、稽古場に業務用で1万円相当の大型扇風機を2台購入。場所前には「暑いからね。集中力をそいじゃうと、みんなけがをする。風に少し当たるとエネルギーも集中力も持つと思う」と意図を説明した。「扇風機なんて1台、そんな高いもんじゃない」と謙遜するが、金額より誠意。気遣いを忘れない大関に、師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)も「周りをよく見ている。ありがたいよね」と感謝した。

昨年3月の大関昇進以降は両膝や左胸のけがに泣かされ、本領を発揮できなかった。不安を抱える両膝にはこの日テーピングを施したものの、場所前には「大丈夫です」と口癖のように万全を強調。ここ数場所は影を潜めていた電車道で、2度目の賜杯へまい進する。【佐藤礼征】