大相撲の「相撲列車」運休について、日本相撲協会の輸送係を務める幕内格行司の木村銀治郎(46=芝田山)に事情を聴いた。すでに日本相撲協会は、7月場所(7月4日初日)を名古屋で開催すると発表したが、相撲列車は運行しない。「相撲列車」とは、力士ら数百人がまとまって移動する電車の通称で、地方場所の場合は東京発着の新幹線のことを指す。地方場所は昨年3月に大阪で開催した春場所以来1年4カ月ぶりとなるが、新型コロナウイルス感染予防のため、大集団での移動は避けることになった。

-相撲列車の切符を手配するのは輸送係の仕事です。相撲列車がない場合、どうなりますか。力士らは、所属する部屋ごとに移動することが発表されました

「あらかじめJRに仮押さえしていたものをキャンセルします。協会員は、部屋ごとのスケジュールに合わせて移動します。お金は立て替えてもらって、あとで振り込みで支払います」

-相撲列車は風物詩でもあります。相撲列車がないことはどう思いますか。番付や力士らの嗜好(しこう)に合わせて席を決めるなど、輸送係の腕の見せどころでもありましたが…

「これはもう仕方ないですよ。団体移動はできませんから。今はすべてが正常に物事が動くように、これまで通り、我慢と努力を続けるしかありません」

-「相撲列車」という言葉は、相撲界や好角家の間では知られていましたが、あまり一般的ではありませんでした。銀治郎さんが著書「大相撲と鉄道」で紹介してから、多くの人に浸透してきたようです。その実感はありますか

「ひしひしと感じています。相撲列車が運行されないというニュースがヤフーニュースになり、コメント欄に『銀治郎さん、がっかりしているだろうな』って書き込みがありました。そんなことはないんですが(笑い)、『相撲列車』というワードを聞いて、僕の顔を思い出してくれる相撲ファンありがとう、という感じです」

相撲列車の復活は、早ければ11月の九州場所になる。【佐々木一郎】