大相撲の境川部屋の三段目力士、響龍(ひびきりゅう)さん(本名・天野光稀)が28日午後6時20分、急性呼吸不全のため東京都内の病院で死去した。日本相撲協会が29日、発表した。28歳だった。響龍さんは、春場所13日目の取組で頭部を強打。救急搬送されて入院中だった。現役力士の死去は、昨年5月に新型コロナウイルス性肺炎による多臓器不全でなくなった三段目の勝武士さん以来。取組で負傷した力士が死亡するのは異例の事態となった。

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あらためてアクシデントが発生した際の協会の対応を振り返った。取組後、響龍さんはうつぶせのまま動けず、倒れてから約1分後に呼び出し3人があおむけにした。その約3分後、国技館内の相撲診療所から医師が到着。響龍さんの状態を確かめ、担架に乗せて土俵を降りて救急搬送した。一連の対応に、約6分以上の時間を要した。

協会としてはできる限りの対応をしたと見るべきか。しかし、響龍さんが6分間以上、土俵に倒れていたのは、異様な光景に見えた。医師の到着が遅くはないか、もっと迅速に対応できなかったのか、そう思わざるを得なかった。

春場所後に行われた審判部による夏場所番付編成会議では、土俵近くに医師を滞在させた方がいいのではないか、という意見が出たという。今後は日本相撲協会として対応を考えることになる。当時の取組後の対応などについて問われた芝田山広報部長は「ここでは何とも言えない。後日、まとめてお伝えできる状態にしたい」とした。相撲協会は5月7日に警備担当の親方衆や若者頭らを集めて「土俵上の緊急対応講習会」を実施する。響龍さんの死去は、大相撲の未来に警鐘を鳴らす形になった。【佐々木隆史】

 

【プロボクシングはドクター義務づけ】

○…プロボクシングの興行では日本ボクシングコミッション(JBC)のライセンスを持つコミッションドクターが、リングサイド最前列に着席して立ち会うことを義務づけている。レフェリーの要請があれば負傷ボクサーの診断をし、緊急事態が起こった場合は速やかに応急の処置をとる。また、ボクサーに試合を続行させることが適切でないと判断した場合は、レフェリー及びJBCに試合中止を勧告する権限もある。試合前日の計量から立ち会い、身体検査も行う。