日本相撲協会は27日、元横綱稀勢の里の荒磯親方(34)が8月1日付で、田子ノ浦部屋から独立し、相撲部屋を新設することを発表した。

田子ノ浦部屋から転属するのは序二段足立、序ノ口西原、谷口、加藤の4人の力士と、幕下行司の木村隆之助。部屋住所は出身の茨城県牛久市に隣接する同県阿見町で、最寄り駅はJRひたち野うしく駅。来年夏前後の完成に向けて準備しており、完成するまでは同県つくば市の筑波大の中にある施設を使用する。

代表取材に応じた荒磯親方は「親御さんから預かった弟子を強くさせ、成長させることが目標。伝統文化を継承し、弟子にも伝えていきたい。力士としての振るまい、言動も大切にしながら指導していく。同時に地域貢献を図り、相撲を通じて地域との交流に携わっていきたい」と抱負を語った。

荒磯親方は19年1月の初場所限りで現役を引退し、部屋付き親方として後進の指導にあたっていた。20年4月には、独立を見据えて早大大学院スポーツ科学研究科に入学。修士課程1年制を修了した今年3月には「新しい相撲部屋経営の在り方」をテーマにした修士論文が最優秀論文として表彰されていた。

部屋の場所に茨城を選んだ理由について「大学院を含めていろいろな人の話を聞いて考えた。相撲の普及面を含め、地方の広い土地なら自分のやりたい育成ができる。環境を重視し、いろいろな挑戦ができると思った。故郷の茨城県へ恩返しをしたいという気持ちもある」と説明した。独立のタイミングについては「いろいろな意味でスムーズに進み、土地にも巡り合った。特に引退から2年と決めていたわけではない」とした。

荒磯親方を指導した平田竹男教授によると、授業では理想的な相撲部屋の設計を研究してきた。角界では土俵の数は「部屋に1つ」が常識だが、稽古の効率性を考慮して「2つ」作れないか模索。さらには、稽古場には複数のカメラを設置し、部屋内には親方や弟子が話し合えるミーティングルームがあり、観光客用に部屋オリジナルグッズなどを置いたお土産コーナーも設置する-。スペース確保の問題こそあるものの、固定観念にとらわれず、今までにない相撲部屋をイメージしていたという。【佐藤礼征】