新横綱の照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が、盤石の相撲で連勝発進を決めた。東前頭筆頭の豊昇龍の変化に落ち着いて対応し、豪快に寄り倒した。三役以上の連勝発進は照ノ富士だけ。17年春場所の稀勢の里に続く史上5人目の新横綱優勝に向けて、上々の滑り出しとなった。両大関は正代が初白星を挙げたものの、かど番の貴景勝は連敗発進を喫した。

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死角が見当たらない。相手の工夫した攻めにも、照ノ富士に慌てる様子はなかった。立ち合いで豊昇龍が左にずれて右を差し込んできたが、照ノ富士は肩越しの左上手から振りまわす。体勢を崩した相手に対して素早く体を寄せて、あおむけにさせた。

圧倒的な相撲内容に照ノ富士も「落ち着いて取れていると思います」とうなずいた。土俵下で取組を見守った幕内後半戦の高田川審判長(元関脇安芸乃島)は「向こう(豊昇龍)が下手の体勢だったが、照ノ富士は無理な体勢にならず一呼吸置いて圧力をかけた」と評価する。新横綱場所2日目。早くも貫禄が備わっている。

自分を信じ、地道に努力してきたからこそ、今がある。伊勢ケ浜部屋では秋場所前の8月は毎年、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)の地元である青森・五所川原市で合宿を行う。コロナ禍で最後に開催されたのは2年前の19年。照ノ富士は復活の途上で幕下だった。その時の激励会で同市の部屋後援会長を務める佐々木孝昌市長(67)に「必ず大関に戻りますから」と強気に伝えた。以来、わずか2年で幕下から大関を超えて最高位。佐々木市長からは「まさか横綱まで上がるとは。伊勢ケ浜部屋の力士が活躍すれば(師匠の地元である)五所川原も盛り上がる。頑張ってほしい」とエールを送られた。

その注目の新横綱場所は、三役以上では照ノ富士だけが連勝発進となった。周囲の期待を一身に背負い、残り13日間を突っ走る。【佐藤礼征】