西前頭2枚目の霧馬山(25=陸奥)が、過去0勝4敗だった大関正代に完勝して1敗を守った。鋭い出足で左前まわしをつかむと、大関に何もさせずに寄り切った。2日目の貴景勝に続く大関連破。新三役への展望も開けてきた。かど番の大関貴景勝は4敗目。新横綱照ノ富士は危なげなく6連勝で、早くも勝ちっぱなしはただ1人となった。

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出足がすべてだった。素早く、低い立ち合いで正代の前まわしをつかんだ霧馬山は、そのまま何もさせず寄り切った。過去0勝4敗の苦手とは思えない完勝。「よかったです。初めて勝って」と表情を緩ませた。

幕内10場所目。上位に定着する力をつけてきた裏には、正代の存在もある。同じ一門の大関にはコロナ禍前、出稽古などで胸を借りてきた。磨いてきた思い切りよく当たる立ち合いが、この日は白星に直結した。「稽古もよくつけてもらってきた」と話したように恩返しの一番になった。

前日5日目に初黒星も、横綱照ノ富士を相手に1分を超える大熱戦を演じた。戻った部屋で師匠の陸奥親方(元大関霧島)から「頭をつけていけるように、もっと力をつけないとな」と激励された。今場所は3日目の高安戦など、長い相撲が目立つ。粘れる形を作ることができるのも、1つの成長の証し。それはこの日の相撲でも示した。

モンゴルで羊を飼育する遊牧民だったことが原点にある。幼いころから馬に乗り、自然と足腰は鍛えられた。知人に誘われ、経験も興味もなかった力士になるためのテストを受けるために来日。素質を見抜いた師匠、そして今は引退した元横綱の鶴竜親方の教えを吸収する。

三役陣との対戦も、あとは関脇御嶽海を残すのみ。新三役も視界に入るが、「1日一番しっかり頑張っていきたい」。謙虚にひたむきに土俵に臨む。【実藤健一】