場所の折り返しを前にして貴景勝が、ようやく本来の相撲を取り切りました。押しに定評のある若隆景が下から押し返せない状況から、何とか打開すべく外から攻めようと、捨て身で跳ぶようにしながら上手を取りに来ました。それだけ貴景勝に圧力があったということです。

それでも黒星がまだ1つ先行しています。連勝を続けたいところでしょう。ただ私の経験上、かど番はそういうものです。ケガしたことを意識しないで取っているつもりでも、取組中にフッとかばうようなこともしてしまうんです。貴景勝の場合も1つケガをしたことで、他のところをかばってしまいケガの箇所が増えてしまって当然、仕方ないところです。そこをカバーして横綱を目指すのですが、今は苦しい。とにかく8勝することが目標です。

もう1つ、私の経験から話しますが、私のかど番の時は、負け越して陥落したら引退させられた時代でした。今は時代も考え方も変わりましたが「力士と書いて武士と読む」と教えられ育ってきた貴景勝のこと。年齢は若いけど、そんな古風な考え方を持つだけに、負け越したら身を引きかねない。そんな生き方はかっこいいけど、もしそうなっても貴景勝には、やり直してほしい。とにかく今場所は勝ち越すことです。応援するファンの方には、単なる勝ち負けでなく若いけど人生をかけて闘っている貴景勝の姿を見てほしいと思います。(日刊スポーツ評論家)