「昭和の大横綱」を祖父に持つ大器が、幕内デビューを白星で飾った。新入幕の東前頭18枚目王鵬(21=大嶽)が西前頭17枚目魁聖を押し出し。鋭い出足で三役経験者を圧倒した。元横綱大鵬の孫で、元関脇貴闘力の三男。入門から4年で立ったあこがれの幕内の土俵で、好スタートを切った。3場所連続優勝を目指す横綱照ノ富士、貴景勝、正代の両大関も安泰だった。

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会場の熱気に圧倒されながらも、王鵬が迫力満点の押し相撲を見せた。194キロの巨漢、魁聖に対して、強烈な左おっつけで主導権を握った。まわしを遠ざけて一気に押し切り「すごく重かったけど、前に運べて良かった」。191センチ、181キロのホープは納得の表情を浮かべた。

あこがれの「午後4時」だった。土俵入り含めて初体験となる幕内の土俵。「人の数が全然違ったので、めちゃくちゃ緊張した。(取組は幕内の)初口で落ち着く暇がなくて、あっという間だったのが逆に良かった」。子どもの頃から大相撲中継を見るのが日常。「学校から帰ってきて、家でテレビで見るのは(幕内が始まる午後)4時からが多かった」。この日の一番は午後4時11分。王鵬少年にとってなじみのある時間だった。

祖父は史上2位の優勝32度を誇る大鵬で、アマチュア時代から「大鵬の孫」として注目を浴び続けてきた。自他ともに認める「おじいちゃん子」。昨年12月24日の番付発表で新入幕が決まると、その日のうちに祖父の墓前に報告した。祖父と比較される場面も多いが「祖父の名前で応援してくれる人はいるので自分はすごいありがたい」と力に変えている。

大鵬は新入幕の60年初場所で初日から11連勝し、12勝3敗で敢闘賞に輝いた。「調子はいい方なので、このまま調子を上げて15日間取りきりたい」と王鵬。幕尻から旋風を巻き起こす。【佐藤礼征】