相撲界もコロナで2年近く苦しめられましたが「今年はいい年になりそうだ」と感じさせてくれる初日でした。それは幕内の最初の一番で勝った王鵬、その3番後に勝った若元春の新入幕がそう思わせてくれました。元気のある若い力士がガムシャラに前に出る相撲を取って、流れを作りました。そして最後は横綱が締める。新しいカラーが加わって理想的な新年初日の土俵でした。

照ノ富士はやっぱり強かった。大栄翔に押されているようにも見えますが、腰の構えがいいから上体は浮かず、下がっても余裕があります。ギリギリに見える相撲を取っている時の照ノ富士は強い。最後も大栄翔に差させるように誘っています。差してしまったことで大栄翔は「押し切るんだ」という我慢をそがれました。あそこは差してはいけません。惜しまれますね。ただ照ノ富士も新横綱から2場所連続で優勝して、一人横綱も3場所目です。強いことに変わりはありませんが、さすがに疲労が出てもおかしくなく、スキがあるような気がします。これは他の力士にとってはチャンスです。新入幕の2人が作った今場所の流れを途絶えさせないためにも、奮起に期待したいです。

話は変わりますが年末年始にある部屋をお邪魔したり、電話で親方衆と話をする機会がありました。感じたのは師匠たちのご苦労です。昨今はコンプライアンスの問題で弟子の育て方も頭を悩ませ試行錯誤を繰り返す中、追い打ちをかけたのがコロナです。行動制限しなければならない中、力士たちのストレスも考えないといけない。どうすればいいんだ、誰のせいにも出来ない…と、まさに堅忍不抜、耐え忍ぶ思いで部屋一丸となって頑張っています。クローズアップされるのは現役力士ですが、それを支える親方衆の存在も重要です。今年の評論ではそんな目線も交えて伝えられたらと思います。今年もよろしくお願いします。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)