関脇御嶽海(29=出羽海)が、事実上の大関昇進を決めた。結びの一番で横綱照ノ富士を寄り切りで破って、3度目の優勝。日本相撲協会審判部の伊勢ケ浜審判長(元横綱旭富士)が、大関昇進をはかる臨時理事会の招集を八角理事長(元横綱北勝海)に要請し、了承された。本来は大関とりの懸かる場所ではなかったが、昇進目安の「三役で3場所33勝」への到達、相撲内容などが評価された。26日の臨時理事会、春場所の番付編成会議を経て正式に決定する。

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ついに悲願の地位に手が届く。土俵下での優勝インタビュー。審判部が八角理事長に大関昇進をはかる臨時理事会の招集を要請し、了承されたことをインタビュアーから告げられた。御嶽海は言葉に詰まった。観客の拍手に後押しされ、震える声を抑えるように、ゆっくりと話した。「なかなか…。そういう経験できることではないので、素直にうれしいです」。はなをすすりながらも、こぼれそうなものはぐっとこらえた。

難敵が目の前にいた。直近で7連敗中の照ノ富士。立ち合いで力強く踏み込み、左のおっつけで照ノ富士の右腕を封じた。1度距離を取り、またも踏み込んでもろ差しに。休むことなく前に出て寄り切った。「一生懸命いくだけでした。正面から当たって後は動ければ勝てると思いました」。三つどもえによる優勝決定戦には持ち込まなかった。

地元からの期待に応えた。場所前に出身の長野・上松町の「あげまつ元気会」から新しい化粧まわしを贈られた。同町は人口約4000人の小さな町で、木曽川沿いには国の史跡名勝天然記念物に指定されている「寝覚めの床」がある。浦島太郎が竜宮城から帰って来た後、晩年を過ごした伝説の地。化粧まわしには浦島太郎扮(ふん)する同町キャラクター「上松太郎」がタイを釣り上げる図柄があしらわれ、期待に応えるように賜杯をつり上げた。

関脇だった2場所前が9勝だったため、審判部は今場所が大関とりの懸かる場所とは明言せず。しかし、高田川審判副部長(元関脇安芸乃島)によると、14日目に単独首位となった時点で、審判部は八角理事長に臨時理事会の招集を要請することを決めていたという。結果、照ノ富士を破って昇進目安の「三役で3場所33勝」にも到達。「理詰めの相撲が今場所はよくできていた」と今場所の相撲内容が評価された。

多くの重圧に耐えての3度目の優勝、そして事実上の大関昇進決定。ここまでの道のりは険しかったが、さらに険しい道は続く。それでも「皆さん注目して見てて下さい」とさらりと言うのが、御嶽海の強さ。長野県出身で227年ぶりの大関昇進にとどまらず、次は県初の横綱を目指す旅が始まる。【佐々木隆史】

○…御嶽海の優勝を両親も喜んだ。父春男さん(73)と母マルガリータさん(51)が、約2年ぶりに本場所を観戦。マルガリータさんは、この日朝に「気をつけて頑張ってね。みんな祈ってるよ」などとメールを送ったという。息子の優勝を見届けて「すごく感動しました。これからも大関で大変だけど頑張って欲しい」とエールを送った。