御嶽海には「今場所13勝して大関とりを来場所につなげてほしい」と場所中に評論しました。その数字に到達しましたが、膝のケガを抱えているとはいえ横綱を破っての優勝です。それも3度目で三役在位も28場所。大関に上がって当然でしょう。だからこそ御嶽海に求めるのは、今場所の相撲を来場所以降も取り続けること。それが出来なければ引退です。それほど三役までとは、責任感が天と地ほどの差があります。大関になると毎日がプレッシャーの連続で、御嶽海の場合は精神的にむらっけをなくすことが必要です。厳しい言葉を並べていますが、一方で貴景勝や正代を差し置いて横綱に上がれるチャンスでもあります。そんな運を御嶽海は持っていると感じています。場所中にも評論しましたが、強い大関、そして横綱になることを期待しています。

照ノ富士は敗れた12日目の明生戦で膝を悪化させたのが響きましたが、横綱の責任は果たしたと思います。横綱でなければ休場するほどの痛みがあったかもしれませんが、それでも一人横綱の責任感があったのでしょう。勝つことだけが横綱じゃないと学んだことと思います。来場所は、膝の回復が中途半端なら最初から休むぐらいの気持ちで治してほしいですね。

互いに攻め続けた阿炎と琴ノ若の気迫あふれる相撲からは、照ノ富士時代の役者がそろいつつあるなと感じました。この2人だけでなく豊昇龍も宇良も明生も…と。「白鵬時代」から、その白鵬が引退して相撲界はどうなってしまうのかと感じていた心配は、若い力士の台頭で消えつつあります。この力士たちが名脇役で終わらず照ノ富士に肩を並べるようになれば、相撲界の未来は明るいものになるはずです。コロナ禍で大変でしょうが、奮起に期待しています。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)