大和魂を心に刻む男が、17年間のマゲ生活に別れを告げた。20年1月の初場所限りで現役を引退した、元大関豪栄道の引退、年寄武隈襲名披露大相撲が29日、東京・両国国技館で行われた。

コロナ禍のため、同所で一般ファンも入れた興行形式の断髪式(引退相撲)が行われるのは、20年2月1日の押尾川親方(元関脇豪風)以来、丸2年ぶり。コロナ禍で2度の延期を経てこの日を迎えた武隈親方は「心の底から感謝しています。直前にコロナ(感染者)が増えて本当に(開催)できるのか、という声が多数あった中で開催できた。日本相撲協会のご理解のおかげ。(延期で)チケットが売れなかったり、こういう(状況の)中、お客さんが集まるのかという不安は常につきまとっていました。快く、たくさんの方に大変な中、来ていただいて本当にありがたいです」と感謝した。

断髪式には、恩師で埼玉栄高相撲部の山田道紀監督、親交のあるプロボクシング元世界チャンピオンの内山高志氏、落語家の桂春団治、五輪競泳メダリストの松田丈志氏ら約400人の関係者が出席。出羽海一門の親方衆や、元横綱白鵬の間垣親方、現役では横綱照ノ富士、埼玉栄高の後輩にあたる大関貴景勝、新大関に昇進した御嶽海らも、はさみを入れた。最後に師匠の境川親方(元小結両国)が止めばさみを入れ、マゲに別れを告げた。

武隈親方は現役引退後、境川部屋付き親方として後進の指導にあたっていたが、2月1日付で境川部屋から独立し「武隈部屋」を新設。同中旬に東京・大田区雪谷大塚町に構える部屋に転居する。「人生1度しかない。やるなら早く勝負したい」と部屋創設の思いを語る武隈親方。大関昇進時に、伝達式の口上で「これからも大和魂を貫いてまいります」と述べた、歴代10位となる在位33場所の名大関が今度は師匠として弟子を育てる。

「弱みを見せないのが力士のあるべき姿。そういう部分を大事に、1人でも多くの関取を育てたい」と語り、オールバックに整髪した姿で最後に、ファンの前に現れると「優勝した時の皆さんの喜んだ顔は一生、忘れません。武隈部屋として私の果たせなかった横綱を育てたいと考えています」と決意表明のあいさつで締めくくった。