大相撲の楯山親方(元前頭誉富士)が19日、東京・両国国技館で年寄楯山襲名披露断髪式を行い、14年のまげ生活に別れを告げた。19年秋場所限りで現役を引退。代表取材に応じ「思った以上にこみ上げるものがありますね」と感慨深く振り返った。

9日に日本相撲協会から新型コロナウイルス感染が発表され、鼻水や微熱、せきの症状があったという。外出できるようになったのは前日18日から。「どうなるのかなと思ったけど、何とか無事に終えることができて良かったです」と胸をなで下ろした。

節目の舞台は、1月31日にNHKを退局してフリーとなった藤井康生アナウンサーが司会を務め、マスクの常時着用、水分以外の食事が禁止されるなど、感染対策が施される中で進行した。冒頭から楯山親方の明るいキャラクターが全開。華麗なステップで土俵に上がると、吉幾三の「俺は絶対、プレスリー」の替え歌「俺は絶対、誉富士」を熱唱。断髪式で自ら美声を披露するのは、かつて北の富士(元横綱)、増位山(元大関)らがいたが「式の冒頭で披露は大相撲史上初かも」と藤井アナウンサーも驚いた。

断髪式には同じ伊勢ケ浜部屋の横綱照ノ富士や、兄弟子で元横綱日馬富士のダワーニャム・ビャンバドルジ氏(37)、安治川親方(元関脇安美錦)、他の部屋からは同じ近大出身で幕内の志摩ノ海、十両徳勝龍、同期で幕内経験者の幕下明瀬山ら約300人の関係者が出席し、はさみを入れた。止めばさみは師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)が入れ、まげを切り落とした。

青森県鰺ケ沢町出身の誉富士は近大出身で、08年初場所が初土俵。12年初場所で新十両、13年夏場所で新入幕を果たし、最高位は15年九州場所の西前頭6枚目だった。

現役時代、最高で165キロあった体重は現在125キロまで落ちた。すでに指導者として日々、後進の指導にあたっており「指導者として、ただ教えるだけではなくて相手のやる気を起こさせる、そういうことができればと思う」と話した。