東大相撲部出身の須山(24=木瀬)が前相撲に登場し、山田海(16=出羽海)を寄り倒しで下し、初陣を白星で飾った。師匠の木瀬親方(元前頭肥後ノ海)からもらった「前に出ろ」とのアドバイス通り、積極的に出て、攻めの姿勢を崩さなかった。初土俵を踏み「やっと始まったな」と充実感をにじませ、今後の目標について「東大なので『東大関』を目指したい」と力強く語った。

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観客もまばらな午前9時過ぎ、待望の瞬間が訪れた。一般的に日本の最難関とされる東大に通う須山が、前相撲で初土俵を踏んだ。国立大出身としては5人目、東大からは初の快挙だが、浮かれる様子はない。8歳下の山田海に立ち合いから素早く右を差し一気に前に出ると、反撃の隙を与えずわずか3秒ほどでの決着。寄り倒しで完勝した。

「とにかく、前に出る力を付けるのが大事だと思って稽古してきた」。同部屋の序二段、三段目の先輩力士らとの稽古。その成果が早くも出た。取組を終え「良かったと思います」。言葉少なげながら、口ぶりには充実感が漂った。

埼玉・市立浦和高から1年浪人の末に慶大に進学したが、高校時代から目指していた「赤門」への思いが捨てきれなかった。1年の仮面浪人の末に東大文科三類に合格。そこで出合ったのが相撲だった。相撲部の仲間たちと週3回練習に励むと、のめり込んだ。

入部当時は体重73キロ。徐々に体力がつき体が大きくなっていた矢先、新型コロナ禍で試合や練習が大幅に制限された。「もうちょっと強くなれたかな」との無念さから、プロへの興味が高まった。3年だった今年3月に卒業単位取得のめどがつき、9月に新弟子検査の年齢制限を超える25歳となるのを前に、4年生での角界入りを決意。

以前から交流のあった木瀬部屋への入門は「迷いはなかった」。4月の新弟子検査の時には104キロだった体重は現在「今は食べた後だと110キロくらい」。毎日の稽古に励みながら、胃袋も大きくして、まずは130キロの大台に乗せることを目指す。

本年度は力士と学生、それも東大生との“二刀流”。今後の目標について「日馬富士さんみたいな速くて力強い相撲を取るために、1日、1日を淡々と頑張っていきます」。落ち着き払った24歳。希望に満ちあふれたスタートを切った。【平山連】

 

▽須山穂嵩(すやま・ほたか)

◆生まれ 1997年(平9)9月23日生まれ、埼玉県ふじみ野市出身。

◆サイズ 180センチ、104キロ。

◆学歴 埼玉・市立浦和高から1年浪人し、慶応大に入学。バンドサークルに入る学生生活だったが、2年連続で受験していた東大への思いを捨て切れず大学1年の冬に3度目の挑戦で合格。現在は文学部哲学科に在籍。

◆趣味 読書、散歩、キャンプ。

◆相撲を始めたきっかけ 東大入学後に何か格闘技を始めようと考えていたところ、相撲部の見学に行ったことでのめり込む。

◆国立大からプロ入り 埼玉大出身で三段目の庄司(武蔵川)ら過去に4人。