日本相撲協会は25日、東京・両国国技館で大相撲名古屋場所(7月10日初日、ドルフィンズアリーナ)の番付編成会議を開き、千代栄(31=九重)の新十両昇進が決まった。入門から苦節13年、遅咲きの花を咲かせ31歳が関取の座をものにした。

師匠の九重親方(元大関千代大海)とともに、報道陣のリモート取材に応じた千代栄は「今日までずっと『どうなんだろう』と思っていましたが、ようやく親方から『上がったよ』と言われて『上がったんや』と」。そこから約40分間の会見は“苦節”とはかけ離れ終始、爆笑ありの明るい空気に包まれた。

31歳での新十両昇進は戦後、4番目の高齢昇進。「年をとっても、あきらめずにやっていれば上がれるんだと。あきらめずにやってきて良かった。(入門から13年半で)おじちゃんですけど(笑い)、まだ全然、頑張ってやれるので応援してもらいたい」と、まだまだ花を咲かせるつもりだ。

13年半のうち約10年は幕下生活。「最高位を更新しては1勝6敗、上位に来て(幕下)1ケタ台になっては1勝6敗」と、気持ちがなえかける時期もあったが、今場所は師匠の言葉が奮い立たせてくれた。「今場所も初日に負けて、やばいなと思ったけど、親方からカツを入れてもらったのが良かった。“何してるんだ”と強めに言ってもらって。“人生が変わる場所なんだよ”と言われて思い切りやろうと。メンタルがすごく弱くて肝っ玉が小さいけど、今場所は勝っていくごとに自信がついていく感じでした」と師匠に感謝した。

入門時の師匠は、昭和の大横綱千代の富士の先代九重親方(故人)。代を引き継いだ現九重親方も「ようやく先代からお預かりした弟子を、十両まで持って行けて安心しました。1つ肩の荷が下りました」と喜んだ。その先代から稽古中に「(そんな稽古をしていたら)親が泣くぞ」とかけられた言葉が今も胸に残るという。「おかげさまで(十両に)上がれました」と報告するそうだ。

31歳の年齢にも、師匠の期待は広がる。「小結…、控えめに三役に上がってほしい」と九重親方。「千代栄栄太」のしこ名に「栄」の字が2つ入る。本名の「岸栄太」と出身校の京都共栄学園高から取ったもの。「2つの『栄』を(しこ名に)もらっている。名前の通り、どんどん栄えてもらって部屋頭に上り詰めてほしい」と期待は大きい。

最近は「一目置いている」と師匠が言うほど、稽古も積極的になったという。31歳、土俵人生はこれから。大輪の花を咲かせてみせる。