大相撲の20年春場所を最後に現役を引退した元関脇豊ノ島の井筒親方(38)の引退、年寄井筒襲名披露大相撲が28日、東京・両国国技館で行われた。

断髪式にはダウンタウンの浜田雅功、タレントの東山紀之ら約400人が参加。現役時代から親交のあった二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)や武隈親方(元大関豪栄道)、間垣親方(元横綱白鵬)らがはさみを入れ、時津風親方(元前頭土佐豊)が止めばさみを入れた。

式典を終えて土俵上で集まった人たちにお礼を述べた井筒親方は「私、豊ノ島は現役時代、相手から1度も逃げることはしませんでした。これが私の相撲人生の一番の誇りです」と胸を張った。波瀾(はらん)万丈の現役生活18年をたたえるかのように、館内は温かい拍手に包まれた。

高知・宿毛高から02年初場所で初土俵。04年夏場所で、体の小さな入門希望者を対象とした第2新弟子検査合格者で初の新十両に上がった。

身長170センチ前後と小柄ながら、持ち前の体の柔らかさや、天才的な差し身のうまさを武器にして三役を13場所務め、三賞10回、金星4個。幕内優勝こそなかったが、10年九州場所では14勝1敗として白鵬と優勝決定戦を戦った。16年名古屋場所前に左アキレス腱(けん)断裂の重傷を負って幕内から幕下に転落したが、19年春場所に再入幕。翌20年4月に18年間にわたる現役生活に幕を閉じた。

マゲに別れを告げ、短髪に整え報道陣の前に登場した井筒親方は「まだちょんまげがある気分」と不思議そうに頭をさすった。

お世話になった約400人の方から、1人ずつはさみを入れてもらったことに、「いろいろな方々のおかげで今がある。本当に幸せ者だった」と感慨深そうに話した。

「引退した後でも2年間ちょんまげがあったんで、どこか力士っぽさがあった」と語る井筒親方にも、ようやく実感が湧いてきた様子だった。「これで本当に終わった」と少し名残惜しそうな表情を浮かべながらも、「よく頑張ったと自分に声を掛けたい」と誇らしそうに言った。

現役生活を終えても、相撲と向き合う日々は続く。今後について「自分が関脇だったので、豊ノ島以上の力士を育てたいですね」。希望に満ちあふれた表情で、第2の人生を進む決意を語った。【平山連】