現役最年長関取として臨んだ5月の大相撲夏場所を最後に現役を引退した元小結の松鳳山(38=放駒、本名・松谷裕也)が28日、東京・両国国技館内で引退会見した。22日に引退届を提出し、日本相撲協会が受理していた。

5月の夏場所は東十両12枚目で3勝12敗と負け越し。7月の大相撲名古屋場所(7月10日初日、ドルフィンズアリーナ)は、11年夏場所以来の幕下となる西幕下5枚目が最終番付となった。

会見の第一声で松鳳山は今の気持ちを問われ「すごいスッキリした気持ちです」と口を開いた。引退を決意したのは、夏場所14日目の千代の国戦。長い相撲の末、突き落としで敗れた一番後に悟った。「スッキリと、やり切ったという気持ちで自分の相撲人生は終わったなと。最後、攻めきれずにコレで終わったなと思った」。千秋楽翌日に松鳳山と今後について話し合った師匠の放駒親方(元関脇玉乃島)は「7月(場所)も(幕下)1ケタの番付で、頑張れば(再十両)という気持ちもあったが、本人が相撲を取るのが怖くなったと。それを聞いて俺もそうだったなと思い出しました。その気持ちで相撲を取らすのはかわいそうだし、本人に失礼だと思った」と明かした。

16年間の現役人生を振り返り「お相撲さんでいるんだと、常に意識しながらの、すごくいい相撲人生、16年間でした。いろいろな人に支えられ、応援してもらい感謝しかありません」と感謝の念を言葉にした。悔いがあるとすれば、35歳ぐらいの時に立てた「40歳まで関取でいる」という目標を果たせなかったこと。「そこを達成できなかったことが心残り。40歳を過ぎて、そこから何年できるかと(いう目標は)なかなか難しかった」と話した。

「丈夫に産んでくれた親に感謝。先代にも」と松鳳山。先代の二所ノ関親方からは、たとえ負けても「前に出れば負けてもいいと言ってくれた。自分の相撲の中心でした」と言われ励みになった。突貫相撲で通した松鳳山らしく、思い出の一番を問われると「大阪で初めて前相撲で土俵に上がった時。相手は相撲経験のない中学生。負けられないという気持ちで一番ドキドキした」。もう一番は「相撲人生終わったなと思える一番が心に残っている」という、あの千代の国戦。金星5つも勲章だが「番付上の人には気持ちで負けない、引かないと思ってやってきた。必死すぎて(金星など)あまり印象に残る相撲はない」と松鳳山らしい言葉を並べた。

自分なりに貫いてきたこと-。それも自信を持って即答した。「継続は力なり、と思っている。稽古もずっと継続してやってきたし、食事もこうと決めたことは、ずっとやってきた。同じことを繰り返し出来る強さ。それが松鳳山です」。

協会に年寄(親方)として残ることは考えていなかったという。「あんまり自分は指導者に向いていないと思うしプレーヤーでいたいと思う。根気強く人に教えるのは、あんまり得意ではない。感覚で分かるでしょう? って思っちゃうタイプなんで、それならこれまで自分が苦労してきたことをサポートできたらと思います。自分がやってきたことを何か形になることはないかなと考えてきていました」と、30歳の頃から思い描いていたという道を歩む。「糖尿病で苦労してきて食事の大切さを勉強しながらやってきたので、そういう人の力になっていけたらなと。お相撲さんのサポート、他競技のアスリートのサポートとか」。具体的には栄養学や運動生理学などを学び資格の取得も視野に入れ「会社にしないといけないのなら、どうやって起業していくとか、これからあいさつ回りが終わって落ち着いたら、勉強しながら考えたい」という。さらに具体的に追及されると「あらためて皆さんに驚いてもらおうと思っているので」と笑みを浮かべながら、サプライズも腹案にあるようだ。

引退会見の最後には、恒例の花束贈呈。さらにサプライズとして、松鳳山には知らせていなかった弟弟子の一山本と島津海の両関取から花束が贈呈された。松鳳山といえば、こわもての顔に浮かぶ涙。ここまで来ても泣かない松鳳山に、司会の西岩親方(元関脇若の里)が「もう1つ、サプライズがあります」と、たたみかけた。入門時から長く師匠として支えてくれた先代二所ノ関親方と、みづえ夫人が花束を持って現れた。「おつかれさま」「ごくろうさん」「ありがとうございました」…。そんな会話が聞こえてきそうな感激のサプライズ演出にも、松鳳山は涙を寸前でこらえながら、笑顔で花束を受け取っていた。

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◆松鳳山裕也(しょうほうざん・ゆうや)1984年(昭59)2月9日生まれ、福岡県築上町出身。本名・松谷裕也。駒大卒業後、元大関若嶋津が師匠を務める松ケ根部屋(当時)に入門。06年3月の春場所で初土俵を踏んだ。4年後の10年夏場所で新十両に昇進。11年九州場所では新入幕を果たした。突き、押しの闘志あふれる突貫相撲を身上に幕内上位で活躍。13年初場所では新三役の小結に昇進した。三役在位は5場所(いずれも小結)。各段優勝は序二段1、幕下2、十両で1回。金星は5個、三賞は4回(殊勲賞1、敢闘賞3)受賞した。通算成績は582勝605敗22休。幕内在位51場所。177センチ、132キロ。