125年ぶりの1横綱1大関となった異例の場所を、残った看板力士が締めた。大関貴景勝(26=常盤山部屋)が結びの一番で東前頭13枚目の琴勝峰(23=佐渡ケ嶽)との相星決戦を制し12勝3敗で13場所ぶり3度目の優勝を果たした。大関以上の優勝は昨年夏場所の横綱照ノ富士以来4場所ぶり。前例通りなら、優勝力士として春場所(3月12日初日・エディオンアリーナ大阪)で横綱昇進に挑むことになる。

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13場所ぶりの賜杯に実感がこもった。琴勝峰との相星決戦を制して支度部屋へ引き揚げてきた貴景勝は、振り絞るように言った。「1日、1日の積み重ねでした。苦しい場面もあったけど、いろんな人に支えられて元気づけてもらった。最後まであきらめずにやって良かった」。館内インタビューでは義父で06年に亡くなった元大関北天佑の優勝回数(2回)を超えたことにも触れ、喜びをかみしめた。

大一番に進化が見えた。思いきり頭から当たって琴勝峰を後退させ、すかさず左を差した。攻め手を緩めることなく、鮮やかにすくい投げを決めた。今場所は投げ技から3勝。20~22年は1年に1勝しか挙げていないことを考えると、その多さが際立つ。師匠の常盤山親方(元小結隆三杉)は「(平幕の)隆の勝との稽古でもたまにやる。押しだけでは勝てない。止まった時とかを想定して、最近増えている」。地道に磨いてきた成果が実を結んだ。

19年春場所後に、大関昇進。22歳だった。わずか2場所で陥落と苦汁を味わった。再び大関に戻り20年11月場所で2度目の賜杯を抱いたが、度重なるけがで3場所で途中休場し、3度のかど番も経験した。

大関にのしかかる重圧を実感しているからこそ、自分への厳しい言葉が並ぶ。昨年7月の名古屋場所から2桁白星を続けても賜杯には1歩届かない状況に、「大関は優勝か、優勝じゃないかしかない」と言った。

今場所は横綱照ノ富士の休場で看板を1人で背負った。圧倒的な優勝での綱とりを目指し10日目まで1敗も、そこから2連敗。それでも、13日目以降は再び白星を積み上げ、12勝3敗という結果を残した。佐渡ケ嶽審判部長(元関脇琴ノ若)は「何とも言えないですね」と口にしたが、準ご当地の大阪での春場所には、再び綱とりがかかる可能性が十分。「謙虚に日々の生活と稽古をしていけば、いずれ報われる」と前を向く。横綱不在で出場力士最上位として5度も取組で血を流す闘志むき出しの相撲をみせた。この優勝を来場所につなげる。【平山連】