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OGGIの「毎日がW杯」

OGGIの「毎日がW杯」

荻島弘一(おぎしま・ひろかず):1960年(昭35)東京都出身。84年に入社し、スポーツ部勤務。五輪、サッカーなどを担当して96年からデスク。出版社編集長を経て05年から編集委員として現場取材に戻る。

日本も学ぶべき点多い米国サッカー


 ベスト8最後の座を巡る争いは、壮絶だった。ベルギーと米国、120分に渡る死闘は、今大会でも屈指の密度の濃さ。MFデブルイネを軸にシュートを乱れ打ったベルギーが、GKハワードの好守が光った米国を2-1で破った。

 ともに速い縦パスで、相手ゴールを襲った。攻守の切り替え、特に守から一気に攻に転じる時の迫力はすさまじかった。息もつかせぬ展開に120分間、目が離せなかった。

 テレビを通して聞こえてくるスタンドの「U・S・A」コールに、興奮を覚えた。かつては「サッカー不毛の地」と呼ばれた米国。94年W杯米国大会前、フットボールを言えばNFLのことで、サッカーは「女子のスポーツ」だった。

 NFLと大リーグ、NBA、NHLの4大スポーツが盛んで「米国にサッカーは根付かない」と言われていた。しかし、今は違う。1次リーグのガーナ戦は、バイデン副大統領もスタジアムで観戦。オバマ大統領がテレビ観戦する様子がニュースになるなど、国民的な関心事になっている。

 1次リーグのポルトガル戦は、米国サッカー番組史上最多の2470万人がテレビ観戦したという。圧倒的な人気を誇るNFLのスーパーボウルは1億人を超えるが、NBAファイナルや大リーグのワールドシリーズを上回る数字。サッカーも米国の「メジャースポーツ」になった。

 もともと、サッカー人口は多い。FIFAの統計では、協会登録人口が約420万人、競技人口は約2500万人もいる。12~17歳を対象にした調査では、サッカー人気が野球と並んだという結果も出ている。

 メジャーリーグサッカー(MLS)の観客数は、1試合平均約1万9000人でJリーグ以上。かつては「カウントダウンシステム」(ロスタイムを取らず、時間通りに終了)や「シュートアウト合戦」(90分で同点の場合はGKと1対1でシュートを狙う)など独自のルールも採用していたが、現在ではFIFAルールそのままが受け入れられて定着している。

 もちろん、今大会の米国の活躍がサッカー人気を盛り上げているのは間違いない。初戦でガーナに劇的な勝利、2戦目はポルトガルと引き分け、3戦目もドイツ相手に健闘した。エキサイティングな内容が、米国民の心をつかんだ。

 日本では「過小評価」されがちな米国だが、世界のサッカー界では確固たる地位を築きつつある。巨大なマーケットは、欧州の各クラブにとっても魅力的。W杯後にはACミラン、マンチェスターU、インテル、リバプールなど欧州CL常連の8クラブが集まって親善大会も行われる。今回の代表の活躍もあって、サッカー熱が盛り上がることは間違いない。

 ドイツ代表のレジェンドでもあるクリンスマン監督は、次のロシアW杯へも意欲をみせている。追撃ゴールを決めたMFグリーンは19歳、右サイドを攻守に駆け回った「米国の長友」ともいえるDFイエドリンは20歳、楽しみな若手も出てきた。こういう試合を経験すれば、代表選手が、いやその国のサッカー界が、大きく成長するはずだ。

 日本も狙うW杯の頂点、欧州と南米以外で初めて立つのは米国かもしれない。もちろん、そこには日本が学ぶべき点も多いと思う。

















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