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紙面企画

事件記者清水優 ブラジル体当たり

事件記者清水優 ブラジル体当たり

◆清水優(しみず・ゆたか)1975年(昭50)生まれ。38歳。東京外大ポルトガル語学科卒。98年入社。静岡支局、文化社会部、朝日新 聞社会部警視庁担当を経て、文化社会部に帰任。事件、事故など中心に行き当たりばったりながら体当たりで取材。体重95キロ。

8歳から薬漬け ブラジルの闇 少女売春


 【レシフェ18日(日本時間19日)】W杯も1次リーグ2戦目に入り、各国サポーターがブラジルに押し寄せている。どこの空港でもW杯のマスコットキャラ、アルマジロのフレコが出迎える。もう1つ必ず目につくのが「子どもたちとの性交渉は違法です」とのポスターだ。欧州に近いレシフェ、ナタルなどブラジル沿岸部のリゾート地は、子どもを性行為の対象にした買春ツアーが社会問題になっている。なぜ、子どもたちが売春をしなければならないのか。レシフェの夜の町に潜入した。

 レシフェのリゾートビーチから少し離れたコンセリェイロ・アギアール通り。午前0時半。交差点の角やシャッターを閉じた商店の店先の暗闇に、少女たちが立っていた。時折、車が止まり、窓越しに男たちが話しかけていた。交渉が成立すると、少女は車に乗り込む。行き先はモーテルだ。

 ホテルで夜の町に詳しいタクシーを呼んでもらい、18歳未満の子どもが立っているところに案内してもらった。ファッションモデルのようにやせた長身の黒人の少女に、タクシーの窓から声をかけた。身長は175センチはあるだろうか。くりくりの目の小さな顔はあまりに幼い。

売春相手の客を待つ女性たち。運転手によると、右端の女性は18歳未満だという

 すぼめた手を、下に向けて上下する性行為のハンドサインを見せ、50レア

ル(約2400円)だという。聞けば、運転手の知り合いだという。名前は「マーガ」と呼ばれている。話を聞きたいと言うと、了解してくれた。

 年齢は22歳と答えた。だが、子ども時代から彼女を知る運転手によると、本当は16歳だという。なぜ、夜の町に立つのか。彼女は、真っすぐこちらを見詰めて答えた。

 「クラッキを買うため。この仕事はやめたいけど、クラッキがやめられない。誰かに病院に連れていってほしい。助けてほしい」

 途中から、目には涙がたまっていた。

 「クラッキ」はコカインの一種「クラック」のこと。ブラジルは世界随一のクラック市場といわれる。麻薬組織の売人から、1回分10レアル程度で買え、依存性が非常に強い。W杯で何か変化があったか聞くと「客の数は変わらないけど、クラッキが安くたくさん入ってきて、自分みたいな子が増えている」と話した。

レシフェの海岸付近とは少し離れた商業地域で客を待つ少女。見た目がかなり幼い

 少女たちから少し離れたところでは麻薬組織の男たちが見張っている。もめ事があればすぐに駆け付ける。代わりに少女たちは売り上げの20%を彼らに払う。

 レシフェ警察当局の麻薬と少年犯罪の担当チーフは「組織は子どもたちが8歳くらいから麻薬を与える。中毒になった男の子には拳銃を渡して強盗させ、女の子には体で稼がせ、その金でまた麻薬を買わせている」と説明した。

海岸通り近くの歩道では、男性数人が警察官から身体検査を受けていた

 少女たちが供述を拒むため、現状を把握しきれてはいないが、2010~12年の間に売春で逮捕された少年少女は40人。うち90%が麻薬中毒で、ほとんどがクラック常用者だった。

 ◆ブラジル麻薬事情 ブラジルは、米国に次ぐ世界第2位の麻薬市場とされる。近隣国のペルーやボリビアが世界最大のコカイン生産国で、ブラジルを経由して米国へ流出している。合成麻薬のコカインが中心で、コカインを精製した高純度の「クラック」では世界最大市場。ブラジル国内の全州都におけるクラック常用者は37万人。全ての違法薬物の35・7%を占めており、麻薬全般の常用者は全州都で100万人と推定される。クラック常用者の3分の1は収入源がなく、窃盗や売春など不正行為で購入資金を捻出しているという。

















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