[ 2014年6月6日7時14分

 紙面から ]練習前、強い日差しの中、足元を指さし厳しい表情を見せる本田(撮影・狩俣裕三)

 【クリアウオーター(米フロリダ州)4日(日本時間5日)】取られる前に取れ!

 日本代表FW本田圭佑(27=ACミラン)が、先制点の重要性を説いた。98年フランス大会以降、W杯で先制したチームが勝つ確率は70%にものぼる。一方で、昨年コンフェデ杯以降、日本が先制を許した試合は16試合中10試合と、ウイークポイントになっている。最後のテストマッチであるザンビア戦をこなし、開幕までに弱点を克服していく構えだ。

 一番乗りで練習場のピッチに入る本田の姿は、合宿地でおなじみの光景になった。ボールを触りながら森重、長谷部、長友と、次々と会話。本田の考えを伝えているようだった。W杯初戦のコートジボワール戦まであと1週間。本田にはチームに染み込ませたいことがあった。今合宿2度目の取材に応じ、語り出した。

 「ポイントで挙げるとやはり、先取点。前回(優勝)のスペインでさえ、スイスに初戦落としてますから。もう少しそこは、チームに先制点取られたら負けるという危機感を持って。データとしてどういう数字残っているのか分かりませんけど、先制点取ったチームが勝つっていうのはセオリーじゃないでしょうか」

 先制点の重要性は近年、増している。W杯で先制したチームが勝つ確率は98年以降、65%→64%→72%→79%と推移。先制し、逃げ切る傾向がある。世界に身を置く本田が感じていたセオリーは間違っていなかった。だから「そこに執着し過ぎるのがチームとしての雰囲気にどう左右するのか、確かに未知な部分ではあるでしょう。しかしふわっと入るよりは100倍いいんじゃないかなと思うので、厳しく、精神面が阻止できるのではと僕は考えている」と、考えをチームに浸透させる構えだ。

 先制される前に、先制するために、本田の役割は大きい。だが今年は、まだ無得点。そこは「しっかり受け止めて。自分の得点というものを最優先に考えているわけじゃない。1つ得点に絡んだプレーとか。その中で自分の結果を出す」。ただ代名詞でもある左足からの直接FK弾は昨年8月のウルグアイ戦以来遠ざかっているが、指摘を受けると本田節が口を突いた。

 「自分自身が大事なところでFKを決めてきたという自負がある。確率論から言えば、さんざっぱら今まで外している。それでポンポンポンポン外したからといって、精度が落ちていると言われても、今までの自分のFKを見てきていない人の発言としか言いようがない。大事なところで外したときにしっかりたたいてくれればいい」。本田の覚悟だった。【栗田成芳】

 ◆W杯での先制チームの勝敗

 日本が初めて出場した98年大会以降、先制点を挙げたチームの成績は、合計164勝45分け26敗で勝率は70%(PK戦は引き分け扱い)。先取点の重要性は大会ごとに高まっており、前回の10年大会では勝率79%に達した。前回優勝のスペインは1次リーグ初戦のスイス戦で先制を許し、そのまま0-1で敗れたが、その後の6試合はすべて先行逃げ切り。決勝トーナメント1回戦からは「4試合連続1-0完封」というW杯史上初の記録を残した。ちなみに今季J1の先制チームは84勝19分け12敗で勝率は73%。