[ 2014年6月17日7時23分

 紙面から ]ストレッチをする香川。後方は腕組みをするザッケローニ監督(撮影・狩俣裕三)

 【イトゥ(ブラジル)15日(日本時間16日)】日本代表のFW香川真司(25=マンチェスターU)が、屈辱をバネにはい上がる。W杯1次リーグ初戦のコートジボワール戦の逆転負けから一夜明けて拠点のイトゥで軽めの調整を終え、心境を明かした。相手に完全に封じ込められ、持ち味を出せなかった背番号10は「次の試合は絶対にやる」と決意表明。逆境からドラマチックな快進撃へとつなげる。

 このままでは終われない!

 終われるはずがない。逆転で敗れたコートジボワール戦のショックを抱えたまま、日本代表はチャーター機で約3時間かけてベースキャンプ地に戻った。15日(日本時間16日)の練習を終えても、香川はまだ自問自答を繰り返していた。何もできなかった悔しさ。それを自分の中で消化して、次への糧にしようと、必死にもがいていた。

 「寝れなかったです。寝付きが良くなくて…。まあ、でもそれはしょうがない。この1日は思うことを思って、後は切り替えてやるしかない。悔しい思いがあって、その感情で眠れなかった。でももう、十分(自分と)向き合ったんでね。これで敗退ではない。次の試合、絶対にやります」

 まるで自分自身に言い聞かせるように、言葉に力を込めた。初戦を落としただけでなく、完全に封じ込まれ、何もできなかったという重い現実がある。シュートは1本も打てなかった。それでも、落ち込んでいる時間などない。中4日で臨むギリシャ戦に勝てば、2大会連続の1次リーグ突破に確かな光りが差し込んでくる。目の前にある逆境から立ち上がるしかない。

 「自分に負けた。プレッシャーも緊張感もあったのは事実ですし、最初の段階でミスが続いて、打開できなかった。それも、自分のメンタルの弱さ。次はもちろん、勝ちに行きます。それしか望みがない」

 W杯にかける思いは、誰よりも強い。前回の南アフリカ大会はメンバーから漏れ、登録外選手として同行。「次の大会は絶対に自分がやるという気持ちで、この4年間を過ごしていきたい」。そう胸に刻んで、歩んできた。愛着あるC大阪を離れて海を渡り、ドルトムントをリーグ2連覇に導き、マンチェスターUへの移籍を勝ち取った。W杯という夢があったから、立ち止まることなく、全速力で走り続けることができた。ようやく立った大舞台。悪夢の場にはしたくない。

 「この4年間、このためにやってきた。勝ったらまた、勢いが出る。それを信じてやります」

 圧倒的な存在感とともに鉄のような精神力を持つ本田とは対照的に、香川は自らの弱さをさらけ出す人間らしい一面もある。直前合宿地の米フロリダで行われた親善試合は2戦2発。状態は悪くない。悩み、苦しんだ先に、必ず希望の光があるはずだ。そう信じて、香川は次のギリシャ戦に臨む。必ず、逆境からはい上がる。【益子浩一】

 ◆コートジボワール戦の香川

 動きに精彩を欠いた。それはプレーデータ(データスタジアム調べ)にも如実に表れた。パスミスを連発し、敵陣でのパス成功率は67%。相手の司令塔Y・トゥーレが84%をマークしたのとは対照的だった。

 ドリブルは1度試みて失敗。その1度も自陣左サイドのペナルティーエリア付近で記録し、相手に脅威を与えるようなプレーにはならなかった。ここでいうドリブルとは相手を意図的に抜き去ろうとするプレー。つまり、敵陣での積極的な「仕掛け」が1度もなかったことになる。守備に追われ、シュート、クロスともに0本。この2項目が1本もなかった試合は、0-3で大敗した昨年6月15日のコンフェデ杯ブラジル戦以来だった。

 ただ、1年前のブラジル戦4日後のイタリア戦(3-4)では一気に復調してみせた。シュート4本で1ゴールをマーク。クロスも4本中2本成功した。ドリブルも7回記録し、4回で相手DFを抜き去った。積極果敢な仕掛けで、堅守のイタリアから多くの好機を生み出した。