[ 2014年6月18日7時18分

 紙面から ]古巣サントスを訪問し、練習場外壁にある自身の壁画の前で笑顔を見せるカズ

 【サントス(ブラジル)16日(日本時間17日)】W杯ブラジル大会で日本協会の「JFAアンバサダー(大使)」を務める元日本代表FW三浦知良(47=横浜FC)が1次リーグ初戦黒星スタートとなった日本代表FW香川真司(25=マンチェスターU)にエールを送った。滞在中のブラジルで古巣サントスの施設を訪問。初めてプロ契約を結んだ思い出の地から愛する香川と代表に思いを託した。

 カズは心配していた。日本協会アンバサダーとして自身の原点でもあるブラジルにやって来た。日本が逆転負けしたコートジボワール戦もレシフェの会場で見た。あれから2日。選手を気遣い、普段から食事をしたり連絡を取り合う海外組の一部にようやく無料通信アプリ「LINE(ライン)」で連絡したと明かした。ただ「既読になんないですね。何人かは(返信などが)来たけどヌーメロ・デース(ポルトガル語で背番号10)はまだ」と“音信不通”の香川を心配した。

 カズへの憧れを公言し「本当のスター」とまで表現している香川はコートジボワール戦でほとんど何もできなかった。一夜明けた15日の合同取材でも落ち込んでいるようだった。プライベートで交流があって性格を知り、プレーも熟知。それだけに「やりにくそうでしたね。リズムに乗れてない部分もあった」と分析し、エールを送った。

 「次の試合ね、取り返すとかそういうことじゃなく、普段の自分でいい。いつもの自分を出せばいいと思う。それが一番難しいけど」

 お前ならできる、普段通りでいい-。重い10番を背負い、W杯デビュー戦で押しつぶされた弟分の心の呪縛を解き放つように優しい言葉を託した。

 カズのサッカー史はそのまま日本代表の歴史の一部といっても大げさではない。ドーハの悲劇を経験しW杯出場は逃したが、日本人として初めて王国でプロ契約を結んだのが、ここサントス。ペレやネイマールを輩出した名門クラブだ。思い出の地で開催されるW杯で日本はやれる、そう示してほしい。15歳で単身ブラジルに渡った当時を思い返し「日本人はサッカーができない、下手くそだと思われていた。そういう目で見られていたので日本代表がいいサッカーをしてみんなが積み上げてきたことを見せてほしい」と要望した。

 カズの周りは明るい。不思議と笑顔になる。出迎えた古巣の関係者もみなそうだった。香川を筆頭に日本代表に向け、こう付け加えた。

 「本当に楽しんでほしい。プレッシャーは大きいと思うけどサッカーですから。サッカーを楽しむ、それでいいんじゃないですか」

 コートジボワール戦の日本代表は苦しそうだった。相手もあることだが、姿勢は貫ける。47歳にして今なお日本代表の魂を燃やすカズ、原点の地からのエールだった。【八反誠】<香川とカズ>

 ◆初対面

 神戸・乙木小5年の時、阪神・淡路大震災の復興支援サッカー教室で会い、サインをもらった。後に知ったカズも「あの中に真司がいたなんて」と驚く。

 ◆初対戦

 C大阪時代の08年4月26日、J2横浜FC戦で初めて対戦。前半終了時にカズから呼び止められ、その場でユニホームを脱ぎ贈られた。現在はマンチェスターの自宅で保管。

 ◆魂を継ぐ

 11年のアジア杯で、93年「ドーハの悲劇」の舞台となったアル・アハリ・スタジアムに立ち「『カズさんの分まで』という気持ちになりますよね」。

 ◆食事会

 11年夏以降、欧州組の帰国時に定期開催。ノンアルコールで盛り上がり、カズからドイツやマンUのサッカー事情を質問される。

 ◆贈り物

 プレミアリーグで優勝した13年、お祝いとしてオーダーメードのイタリア製の靴(約40万円)を贈られた。

 ◆メール

 節目で祝福メールが届く。13年のプレシーズンマッチ横浜-マンU戦でカズから「りさ子(夫人)と行くよ」と届いた際には「最高のデートとなるよう頑張ります」と返信。