[ 2014年6月21日7時14分

 紙面から ]<W杯:日本0-0ギリシャ>◇1次リーグC組◇19日◇ナタル

 日本代表アルベルト・ザッケローニ監督(61)の必勝プランが、またも不完全燃焼に終わった。サイドを攻略するため、FW香川真司(25)を控えに回し、FW大久保嘉人(32)を先発に起用。大久保は好機を演出したが、チームとしては得点力不足を解消できなかった。終盤は不慣れなパワープレーに移行するなど有効な手を打てず、1次リーグ突破の可能性は極めて低くなった。

 怒気をはらんだ険しい雰囲気から一転して、会見場では疲れ切った表情を浮かべていた。ザッケローニ監督は「勝つべき試合だった。数的優位をつくり、サイドから攻めようと思っていた。ある程度できたが、もう少し足りないところがあった」と淡々と話した。

 主導権を握り、数的有利に立ったが、「勝つべき試合」を勝ち点3につなげられなかった。初戦のコートジボワール戦に続き、采配のちぐはぐさを露呈した。

 ▼香川のベンチスタート

 「戦術的な選択。サイドから攻めたかった。香川はサイドをこなすが、基本的に真ん中の選手。中央に入っていくことが多い」と説明した。だが、これまで香川について「日本代表ではサイドが生きると考えている」と評しており、場当たり感は否めない。代わりの大久保もサイドだけでなく、中央や逆サイドにも幅広く動き回った。

 ▼岡崎の1トップ

 後半12分、FW大迫に代わって香川を投入。これまで2列目の左サイドにいたFW岡崎を1トップに置いた。「どうしても勝つ必要があった。FWの数を増やそうとした」。この時点でギリシャは数的不利に陥り、下がって守りを固め、DFラインの裏のスペースがほぼなかった。DFの裏を突く岡崎の持ち味が発揮しづらい状況だったため、前線で体を張れる大迫や大久保を1トップに置く方が有効だった。

 ▼再びロングボール

 終盤、指揮官はゴールを奪うために初戦でも取った「付け焼き刃」のロングボールを放り込む作戦を選択した。「4年間、技術と速さを使いプレーすることを学んできた。(基本的には)W杯でもこの戦いを続けたいと考えた」と説明したが、初戦に続き、これまで貫いた日本のサッカーを放棄した。ギリシャは日本の細かいパスワークやドリブルに手を焼いており、ロングボールが最も有効であったかは極めて微妙だ。

 単調に一辺倒のクロスを上げ続け、安全な横パスを連発。リスクを伴う縦パスやドリブル突破が少なかった選手の責任もある。だが、この2試合で最もブレたのは間違いなく指揮官。「全く満足していない。最後のパス、クロスのアイデアが足りなかった」と振り返ったが、もうこの2試合は帰ってこない。コロンビア戦で4年間の集大成を世界に示し、奇跡を呼び寄せるしかない。【菅家大輔】