[ 2014年7月6日23時5分

 紙面から ]スニガの右膝を腰に受け、もだえるネイマールを心配そうに見つめるロドリゲス(中央)<W杯:ブラジル2-1コロンビア>◇準々決勝◇4日◇フォルタレザ

 今大会の主役の1人、コロンビア代表MFハメス・ロドリゲス(22)のW杯が終わった。準々決勝のブラジル戦に、普段の左MFではなくシャドーストライカーとして先発フル出場。後半35分に5戦連発ゴールとなるPKを決めた。今大会6点目は得点ランクトップ。W杯デビュー戦から5戦連発は史上5人目。1-2で競り負けた後は号泣。同国史上初の8強に導いた大黒柱は、鮮烈な印象を残したまま大会を去る。

 敗退を告げる笛が鳴ると、ロドリゲスはその場にしゃがみ込み涙した。メッシ(アルゼンチン)や同い年のネイマールらが注目される中、主役の座を奪い観衆を魅了した22歳は「男でも泣くときはある。今はすごく悲しい」と言葉を絞り出し、初めてのW杯を終えた。

 王国の壁は厚かった。シャドーストライカーで先発出場。だが大黒柱は徹底的に分析され、経験豊富なDF陣にスペースを消された。当然マークは厳しくなり、被ファウル数は両チーム最多の「6」。リズムに乗り切れなかった。0-1の後半24分にはスライディングタックルでFKを与え、ダビドルイスに2点目を献上。王者を前に、もがき続けた。

 それでも後半32分、DFの間にスルーパスを通し、FWバッカとGKが交錯。PKを誘発すると、任されたキッカーとしてGKジュリオセザールの動きを見て、左足で左隅に決め一矢報いた。すぐにボールを取り、控えめにガッツポーズしながらセンターサークルへ。その右腕には大きなバッタが止まっていたが、勝利に集中していて気づかなかった。スペイン語でバッタは「希望」という意味。華麗なドリブルで相手DFを翻弄(ほんろう)するなど、勝利への希望をつかみかけたが、最後は力尽きた。

 初めてのW杯は5試合6得点2アシスト。デビュー戦から5戦以上の連発記録はシャロシ(ハンガリー)フォンテーヌ(フランス)ミュラー(西ドイツ)、クビジャス(ペルー)に次ぐ史上5人目の快挙だ。22歳での6得点もジェンゲレール(ハンガリー)ペレ(ブラジル)に次ぐ3人目で、得点ランクも2位に2点差。得点王、MVPの可能性も十分に残した。

 94年大会では米国戦でオウンゴールで敗れ、DFエスコバルが射殺された。その悲劇を乗り越え、エースFWファルカオ不在の穴を埋める活躍で母国史上初の8強入り。「国民全員を味方にしたことは誇り」。試合後には敵のダビドルイスから指をさされ、約6万人の大観衆から惜しみない拍手が送られた。4年後のロシア大会は26歳。より脂の乗った状態で迎える。「残念だったけど、いい経験になった」。この悔しさが、成長の糧になる。