AKB48の新エース向井地美音(18)が19日、初のソロコンサートを行いました。小学生時代には、連続ドラマ「アンフェア」シリーズで、主演篠原涼子の娘役を演じるなど、人気子役として活躍していましたが、人生で最も大きな影響を受けたのは、6年前の中学時代に親友の勧めで知ったAKB48でした。

 この日のコンサートで「それまでの私は、何かに一生懸命になったり、何か1つのものを大好きになったりすることがなかったんです。あのころ、AKBは私の生活の全てでした」と明かしました。

 連ドラでレギュラーを張るほどの子役だと、普通の子供よりも、いろんなものに触れられて生活が豊かだったのではと想像してしまいますが、向井地にとっては、そんな希有な経験以上に、AKBというアイドルが衝撃的で、圧倒的に憧れてしまうほどの存在だったというわけです。

 ちょうど4年前の1月19日に、その憧れのAKBの研究生オーディションに合格。デビュー当時は、別の同期生が、先に大きなチャンスをもらっていました。決して最初から「エース候補」として優遇されていたわけではありません。むしろ無欲で「最初はAKBの一員でいられるだけで、毎日が幸せでした」。ただ、毎日感謝の気持ちで活動するわけですから、目の前の仕事1つ1つを丁寧に、心を込めて取り組みます。そんな愚直な姿勢が、劇場公演や握手会でファンにも伝わり、4年をかけて着実に人気を獲得していき、先輩メンバーもまだまだ多い中で「新エース」と呼ばれるまでに飛躍しました。この夜のソロコンサートは、そんな頑張りを認めたスタッフたちが用意してくれた晴れ舞台だったのです。

 スタッフたちは、コンサートのサブタイトルに「大声でいま伝えたいことがある」と付けていました。控えめな性格の向井地は「私なんかがソロコンサートをしていいのか? しかも、意味深なタイトルまで付けられていて…」と、当初は尻込み気味だったといいます。でも、たった1つだけ「AKB愛だけは、誰にも負けないほど強い」と自負できる部分がありました。セットリスト(曲目)もMCも、どれだけグループのことが好きかを表現する内容にしました。「コンセプトを決めて、リハーサルを繰り返していたら、不思議と自信が付いてきたんです」。いざ本番を迎えても、直前になっても緊張しないほどになっていました。

 そして、大人たちが舞台を用意してくれた意図を受け止めて、「もう、そつなくこなすっていう優等生、いい子ちゃんはやめます! 誰にも嫌われたくないって恐れも捨てて、私は大好きなAKBを先頭で引っ張る存在になりたいです!」と、高らかに宣言しました。「いろんな先輩方が卒業していく今、私がやらなきゃ誰がやるんだと。まだ9年もあるけれど、私はAKB結成20周年まで居続けたいです」と続けました。

 ステージのスポットライトは、どんな高価な化粧よりも、女の子をきれいに、輝かせます。ファンの声援は、何よりもアイドルに自信を付けさせます。1人の元AKBファンの女の子が、覚醒した瞬間でした。

 AKBを好きになったきっかけの曲「桜の木になろう」を歌いながら、涙を溢れさせました。「何もなかった中2の私を思い出しながら歌っていました。あの時の私に、心の中で『6年後にこんな景色があるんだよ』と言いながら歌っていたら、うれしくて泣いちゃいました」。

 5歳と6歳の娘がいる記者の私に、AKBのメンバーのほとんどは、「娘さんはアイドルにさせない方がいいですよ。華やかに見えて過酷ですから」と勧めてきません。そんな中、たった1人、向井地だけは「娘さんもアイドルになれたら素敵ですね。私は勧めます」と言ってくれています。誇りとやりがいと感謝を持って毎日を活動する向井地のことを、偉大な先輩渡辺麻友は「AKBの救世主」と呼んでいます。