こんなに明るい卒業発表は、あまり記憶にない。AKB48中村麻里子(23)が16日、東京・秋葉原のAKB48劇場で、グループ卒業を発表した。この日は出演メンバーではなかったが、明学大の卒業式に出席したその足で、そのままのはかま姿で登壇。大学卒業と、今春からサンテレビジョンに契約アナウンサーとして働くこと、そして今月いっぱいでのアイドル活動にピリオドを打つことをあわせて発表した。「タイガースのように、地元に愛されるアナウンサーになりたい」と抱負を語った。

 7年半のアイドル活動を終え、旅立つ中村に、涙はまったくなかった。「未来に向かって突き進んで行きたい」。まっすぐな目で語る姿は、りりしくもあった。「もう遠く(の存在)になっちゃうね…」と寂しがるメンバーには、手を差し伸べて「今はまだ手が届く、チョロいアイドルです」と言って笑わせた。

 48グループの卒業発表は、どちらかというと、しんみりムードになりがちだ。一生に一度の青春時代をささげ、何年間も活動してきたが、アイドルに区切りを付ける覚悟を明かす瞬間だからだ。しかも、当然のことながら、ほとんどが事前の告知もない。ところが、この日はまったく違った。既に一部報道で女子アナになることを報じられていたとはいえ、メンバーもファンも温かい拍手で祝福したのは、中村の人柄のなせる業だろう。

 総選挙でランクインするほどの人気メンバーではないが、なぜかいると安心する。一昨年、日刊スポーツで毎年恒例の「AKB48選抜総選挙」の全員紹介連載の現場でのこと。中村は学校を終えた夕方、撮影スタジオにやって来た。「今日、学校だったんですよ~」。撮影を終えると、学校で起きた出来事を楽しそうに話し始めた。大人に気を使うわけでも、使わせるわけでもない。とにかく自然体なのだ。

 いい意味で、アイドルっぽくない存在感。同期の横山由依、島崎遥香からも頼られていたのがよく分かった。新生活は4月からという。最後に「(20日の)握手会の当日券、まだありますよ~」。2週間を切ったアイドル活動を、最後まで楽しんでほしい。