AKB48グループのメンバーに将来の夢や目標を聞くと、「女優」という答えが最も多い。卒業生にも、映画で主演を張る前田敦子や、大作にも多く出ている川栄李奈ら、活躍している者が多くいることも理由だろう。映画やテレビドラマとなると狭き門だが、舞台などでは現役メンバーにも最近は活躍の舞台を与えられることが多い印象だ。

 一方で、歌手志望のメンバーは昔からあまりいない。高橋みなみが卒業後、歌手としてツアーを行ったり、板野友美がシングルをリリースしているが、女優と比べると数は限られている。そんな中で最近、歌手という夢を明確に語り始めたメンバーが現れた。AKB48/STU48岡田奈々(20)だ。往年の名女優と同姓同名だが、そこは置いておいて、岡田はどんなメンバーなのか。

 岡田が脚光を浴びたのは、AKB48の14期生として加入した12年のことだ。小嶋真子、西野未姫とのトリオは「三銃士」の異名で人気を博し、派生ユニット「てんとうむChu!」のメンバーにも選ばれるなど、新世代の旗手の1人として期待された。

 今でこそ茶髪のショートカットがトレードマークだが、当時は別人のような黒髪ロングが特徴だった。「まじめな高校生」を絵に描いたような姿。劇場の大掃除をスタッフに提案するなど、内面もまさに「学級委員」で、裏切らないまじめキャラとしてファンから強い信頼を得てきた。

 一方で、まじめすぎる性格から、理想と現実のはざまで落ち込み、「闇」の部分を見せることもある。1月に開催された初のソロコンサートでは、岡田自ら選んだ「闇曲」の数々を披露した。ロックやジャズ、時にはアカペラを駆使した、およそアイドルとはかけ離れた、暗く陰鬱(いんうつ)な選曲が大半。哀愁を感じさせる歌声で歌いきり、誰にも表現できない世界観をつくり上げた。コンサート後、「1度きりで終わらせたくないし、歌うのが好きなので、ここで止まるのではなく、2度目、3度目、4度目、そしていつかはソロデビューをしたいと思います」と、晴れやかな表情で言い切ったのが印象的だった。

 そんな岡田は、AKB48の最新シングル「ジャーバージャ」で自身初の表題曲センターを務めている。14日放送のNHK「うたコン」でも、NMB48山本彩らと高い歌唱力を披露した。AKB48は、前田や渡辺麻友がセンターなら王道アイドル、指原莉乃が引っ張ればバラエティーアイドル、松井珠理奈が真ん中なら、気迫あふれるアイドルになった。時代やメンバーとともに、さまざまなキャラクターを見せてきたAKB48の顔に、岡田が「歌えるアイドル」の選択肢を加えることになりそうだ。