第5回AKB48選抜総選挙(6月8日開票イベント、横浜・日産スタジアム)の立候補締め切り日の7日、グループからの卒業を表明しているAKB48板野友美(21)が、駆け込みで立候補届けを提出した。予想外の展開だが、本人は真意を明かさないままで、立候補の手続きは深夜0時に締め切り。248人の出馬が決定した。昨年の237人を上回る過去最高の候補者数となった。

 最後のサプライズは、板野の出馬だった。2月1日にAKBからの卒業を宣言。明確な卒業日は確定していないが、グループを去りゆくメンバーの立候補は、予想外の展開だ。この日、握手会が行われた千葉・幕張メッセで立候補届を提出。真意は明かさなかったが、関係者の話によると、前日6日夜に、1人で決断したとみられる。

 当初は出馬を考えていなかったという。ただ、板野と親しい知人は、あくまで臆測と前置きした上で、笑いながら説明した。

 「ともちんはセオリーが好きじゃないし、いい意味で人の予想を裏切ることや、波風を立てることで、AKBに活性化を生んできた希少なメンバーなんです。卒業を控えて、選挙もただ傍観しているという、ありきたりの退屈な流れに、最後は自ら『?』マークをつけ、思い切った決断をしたんでしょう。彼女は、ちょっとだけあまのじゃくなネコちゃんなんです」

 板野は、知人の解説通りに、AKB48が「アキバ系アイドル」と呼ばれる清楚(せいそ)な黒髪で統一されたグループだったころから茶髪に挑戦。当時のグループイメージと正反対の渋谷系に転身、オシャレ好きな同世代のカリスマになった。結果、大勢の女子をファン層に取り込み、AKB48を国民的アイドルグループに飛躍させる一因になった。

 また、別の関係者は「板野は、やめる自分が出ることは、ファンに失礼に当たるのではないかとも思い、最後まで悩んでいたのではないか」と話す。その一方で、立候補締め切り日が迫るにつれて「長くお世話になったAKB48のお祭り(総選挙)を、もっと盛り上げたい。最後の恩返しになるなら」という、1期生ならではの思いも湧いてきていたとみられる。否定的な意見もあり得る中で、覚悟した決断だった。

 板野のこれまでの選挙は、波瀾(はらん)万丈だった。第2回では7位から急上昇の4位。ソロデビューで大成功した直後で、前田敦子、大島優子の2強に食い込むと戦前予想された10年の第3回は、一転して8位転落。酸いも甘いも経験させられたステージに、再度臨む。卒業ご祝儀で投票が集まるか?

 去る者追わずがアイドルの世界か?

 まったく読めない超ダークホースの出馬で、がぜん、AKB48選抜総選挙が面白みを増してきた。【瀬津真也】