SKE48が、念願のナゴヤドーム公演を単独で実現させた。2年ぶりのツアー「SKE党決起集会。『箱で推せ!』」は1日、ナゴヤドームでツアー最終地点に到着。結成から5年4カ月で、48グループ初の単独ドームコンサートを行い、45曲を披露した。主力メンバーの大量卒業など、涙の歴史を乗り越え、AKB48も実現させたことのない境地にたどり着いた。

 トレードマークの玉の汗より先に、目には涙が光った。1期生7人によるオープニング「神々の領域」から、もう涙で歌声にならない。松井玲奈(22)が「何か…胸がいっぱいです」と声を詰まらせると、松井珠理奈(16)は「感極まっちゃうよね」と、右ほおの涙をぬぐった。

 名古屋の象徴、金のしゃちほこに見守られながら、65人が夢の舞台に立った。10月の3都市ツアー開幕時、骨組みだった屋根は、終着点で名古屋城を模した立派なステージに生まれ変わった。デビュー当初、コンサートのタイトルは「天下を獲るぜ!!」「名古屋一揆」と、戦国時代にかけてAKB48への対抗心をあおったもの。そんなうたい文句も、もう必要ない。AKB48をしのぐダンスの激しさを突き詰め、磨き上げた。SKE48だけの世界を、激しく髪を振り乱して表現した。用意された921着の衣装は、どれも汗でびしょぬれだった。

 自分たちだけのドームに立てた喜びはひとしおだ。昨年8月、AKB48のツアーでナゴヤドームを経験した木崎ゆりあ(17)は「あのときは手を振ったら、その方は(AKB48の)先輩を見ていた」と苦笑い。須田亜香里(22)は「あのときにSKEコールをもらったけど、『AKBさんの公演だからいいのかな?』という気持ちだった」と本音をもらした。

 08年10月5日、たった270人の前で、SKE48は生まれた。1945日の日々は、涙の物語だった。春のメンバーの大量卒業は、今や悲しい恒例行事。そのたびに、ファンは風雨をしのぐように身を寄せ合い、結束した。そんな中で生まれたのが、グループ全体を応援する「箱推し」という言葉。それが今ツアーのサブタイトルとなって、夢舞台に花を添えた。

 単独ドームは48グループ初。ただそれは、AKB48が姉妹グループを参加させてくれていたからでもある。松井珠は「ドームをやってなくても、1番になりたい気持ちは変わらない。ドームをやって、1歩近づいていると思う」と自信満々に言い切った。【森本隆】