AKB48が29日、初の東京・国立競技場コンサートを開催した。結成8年4カ月でたどり着いた国内最大・最高峰の会場を、姉妹グループからの助っ人を借りず、単独で7万人を熱狂させた。今日30日の2日目で卒業セレモニーを催すエース大島優子(25)は一番の大声援を浴び、八面六臂(ろっぴ)の活躍だった。

 1日で最も地球が美しく彩られるといわれる日没の瞬間、国立競技場の14万個の瞳は、ステージの大島一点に注がれた。

 7年半前に全AKB48メンバーの中で初めて、大島だけが授かったソロ曲「泣きながら微笑んで」だ。当初は「歌が苦手」と、悩みながら歌っていた曲を、「最もお気に入りの衣装の1つ」という水色のドレスに包まれて、かみしめるように歌った。難しい高音の裏声も、すり鉢状の会場にきれいに響かせた。たとえ苦手でも、必ず期待を上回る結果で披露してみせる。「変幻自在のエンターテイナー」と呼ばれてきた大島の、面目躍如だった。

 この日もヒロインは大島だった。冒頭は、シングルヒット曲ではなく大島所属チームKの劇場曲「転がる石になれ」。「暴れるぞ~!!」と叫び、拳を力強く振り上げると「みんな、もっと熱くなれよ~!!」と7万人をあおった。中盤は、大島が秋葉原のAKB48劇場で歌い紡いできたユニット曲などを、後輩を従え5曲連続。「UZA」で夜空に宙づりになってもただでは終わらない。片足をワイヤに引っかけただけの立ち姿で左右にブンブン振り回されても、シリアスな表情で歌詞の世界観を演じきった。何度瞳を潤ませても、笑顔は決して崩さなかった。

 1カ月前の大組閣で48グループ全メンバーを入れ替えたため、コンサートのサブタイトルは「思い出は全部ここに捨てていけ!」。秋元康総合プロデューサーからの「いつまでも成功体験にしがみつくな」とのメッセージだが、大島だけはとっくに実践してきていた。

 大島

 昔から私は、AKBの物は一切部屋に置いてないんです。私の一番のファンである父が、大切に集めてくれてるので、思い出は、里帰りしたときに振り返られればいいんです。

 大島は、前しか向かずに卒業していく。今夜、ファンと後輩たちも、同じ志で見送ることができた時、その先に、それぞれの明るい未来が開けてくる。【瀬津真也】