AKB48グループ総監督である高橋みなみ(23)の卒業発表に、メンバー、ファンは激しく動揺した。2005年12月8日、AKB48結成時の1期生でブレークの立役者になったリーダーの決断。後継者に指名された横山由依(22)は、重圧も感じながら涙で先輩の言葉にうなずいた。

 AKB48劇場での9周年記念公演。いつもの締めのあいさつとは違った。高橋は「来年は10周年、節目の1年だと思っています」と言い、瞳から一筋の涙をこぼした。何かがおかしい。小さな劇場に、緊張感が充満した。その中で、高橋は呼吸を整え、考え抜いた決断を口にした。

 「私、高橋みなみは、2015年12月8日をめどに卒業します。まだ1年先の話です。メンバーに引き継ぐ時間、猶予をいただくため、このタイミングで発表させていただきました」

 1年後の卒業。メンバーのこと、グループのことを最優先に考えてきた総監督らしい幕引きだった。下を向いて涙し、顔を見合わせるメンバーもいたが、多くは労をねぎらうようにほほえんでいた。両隣の小嶋陽菜(26)峯岸みなみ(22)の同期2人には、公演前に卒業を明かしていた。この日、3人で歌った「愛の存在」では、今にも泣きそうな峯岸に、笑顔でアイコンタクトした。

 12年から総監督を約2年半、務めてきた。「私だけで(総監督の制度を)終わらせようと思った」。それでも、あえて横山を後継者に指名した。周囲の空気に流されない芯の強さを信じ、その勇気にAKB48の未来を託した。

 隣に呼び寄せると、横山の左腕を握って言った。「総監督は苦しいです。それと同時に、見てもらえるチャンスが増えると思って頑張って」。ただ目に涙を浮かべ、うなずくだけの横山に、「何か言ってよ~」とおどけた。

 この日は横山の22歳の誕生日だった。重すぎる誕生日プレゼントを贈った形になったが、見捨てるようなことは決してしない。「1年間でバトンをつなげたい。後輩に残せることは、まだたくさんある」。それが、AKB48の一員としての最後の仕事になる。