アントニオ猪木(65)が映画に初主演することが26日、分かった。芥川賞作家辻仁成氏(48)の監督・脚本作品「アカシアの花が咲き出すころ-ACACIA-」(来春公開予定)で、元プロレスラーで孤独な初老の男を演じる。他人に心を許さない少年との交流を通し、人のきずなの大切さ、家族愛を伝える内容で、来年のカンヌなど国際映画祭出品を目指す。

 猪木は、現実と同じで元プロレスラーの主人公・大魔神役。過去に栄光を味わったが、現在は家族と別れ、1人暮らしを続ける。そんな孤独な大魔神といじめられっ子の小学生タクロウ(林凌雅)との交流を通して、人のきずな、愛の重みを伝えていく。猪木は「この映画で、元気のない人に元気を与えたい」と初主演作への意欲を見せた。

 昨年秋、都内のホテルで、同作品の構想を練っていた辻氏と偶然出会った。もともと、プロレス、格闘技が好きで、猪木のファンだった辻氏は会った瞬間、存在感に圧倒され、主演作品製作を即決。猪木も、辻氏の熱意に心を打たれ、異色タッグが実現した。

 以来、猪木と打ち合わせを重ねている辻氏は「猪木さんの中に、優しくたくましい父性を見た。今の時代に必要とされる愛ある映画を目指したい」と話す。同作品は来年のカンヌ、ベルリン、ベネチアの3大国際映画祭の出品を目指す。「一緒にカンヌに行きましょう」と2人で赤じゅうたんを歩くことが目標だ。

 猪木はこれまで、ドラマ、映画の出演経験はあるが、主演は初めて。別れた妻役を石田えり、小学生タクロウの父親役を北村一輝が演じる。クランクインは6月下旬で、全編北海道・函館で撮影する。公開は来年春予定。「格闘家であり続けること、地球のために行動を続けること、そして役者業。すべては同じだよ」と猪木。今度はリングではなく、スクリーンから闘魂を発信する。