米アカデミー賞外国語映画部門にノミネートされた「おくりびと」(公開中)の主演本木雅弘(43)と滝田洋二郎監督(53)が23日、東京・築地の松竹本社で会見を行った。2人は2月22日(日本時間23日)にロサンゼルスで行われる授賞式にも出席を予定している。アカデミー賞は本木にとって、妻内田也哉子と初めて一緒に仕事をし、プロポーズもした思い出の場所。企画から携わった作品を持って、思い出の場所に向かう。

 本木は、主演俳優としてだけではない思いを、かみしめていた。ひつぎに遺体を納める納棺師を「納棺夫日記」という本で知り、10数年前から映画化を進めてきた。「平静が保てないままここにいます。これ以上は何も望まないので、観客のつもりで行きます」と、喜びと驚きを話した。

 「おくりびと」は国内外で多くの映画賞を取ったが、やはりアカデミー賞は、世界一の映画の祭典。受賞の期待が高まる。滝田監督は「何も考えずに行きたい」と無欲だ。本木はスピーチについて聞かれると「周りには準備しておくようにと。何て言いましょうか…。『Yes

 we

 can』で」と笑わせた。

 授賞式は妻也哉子との思い出の場所でもある。93年、本木はテレビ番組のナビゲーターとして参加し、2人で初めて一緒に仕事をした。「レッドカーペットで取材したのですが、当時16歳だった奥さんに通訳してもらいました。懐かしめたら」と語った。プロポーズもこの時だった。2人は95年に結婚。結婚前に也哉子は、授賞式の時に本木から「結婚したい時期になったら、僕を選択肢の中に」と、言われたことを明かしている。今回、夫婦での参加は未定だが、一緒に行く可能性もある。

 也哉子の両親で、歌手内田裕也、女優樹木希林も喜んでいる。第1次選考9作品に残った時、内田から「アカデミー賞のことを祈ったぞ」とファクスが届いた。「樹木さんは今朝、『だって世界だからねえ』と、しみじみ喜んでくれたみたい」と話した。

 映画化を一緒に進めてきた事務所社長が一昨年亡くなり、劇中で父親を演じた峰岸徹さんは昨年10月に亡くなった。多くの人の思いが詰まった作品を、最高の舞台に持って行く。