第32回日本アカデミー賞授賞式が20日、都内で行われ、本木雅弘(43)主演の「おくりびと」(滝田洋二郎監督)が、最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞など10冠を獲得した。同作は日本時間23日に行われる米アカデミー賞の外国語映画賞にもノミネートされており、受賞へ弾みがついた。滝田監督、本木、広末涼子は21日にロサンゼルスへ向けて出発。本木の妻でエッセイストの内田也哉子も同行する。

 これまで「どんなに褒められても、後ろ向きな気持ちになってしまう」と話していた本木が、ようやく「ホッとした。すべてのバランスが奇跡的につながって映画ができた」と話した。

 「おくりびと」は主要部門をはじめスタッフを対象部門も含め、全部門で優秀賞を受賞していた。この日発表された最優秀賞では、主要部門以外に脚本、撮影、照明、録音、編集でも受賞し10冠と今年最多となった。

 本木が納棺師を描いた本に出会い、映画化を企画しただけに思い入れは強かった。チェロ奏者から納棺師に転身した男を演じるために、チェロも納棺も猛特訓。共演の山崎努は、本木に向かって「予約しました、おくりびと」、司会を務める義母の樹木希林も「うちにはおくりびとがいますので、安心しています」と、2人からは納棺の希望まで飛び出した。

 しかし、熱演やまじめさを褒められても「カメラの前に来るまで迷っているので、形だけでも整えようと思っているだけ。まじめは俳優としてのコンプレックス」と説明した。しかし、「シコふんじゃった。」以来、16年ぶりの最優秀主演男優賞を受賞し、最優秀作品賞も決まると、ようやく、すがすがしい表情になった。樹木から「今晩は、おいしいお酒を飲みましょう」と声を掛けられると、にっこり笑った。

 これで本場、米アカデミー賞へ勢いがついた。滝田監督は「気持ちよく行けます」、本木は「お伊勢参り、物見遊山に行くつもりで」と話した。名実ともに、日本代表作品の称号を手に、滝田監督、本木、広末が授賞式に臨む。