クリント・イーストウッド監督(79)がこのほど、新作映画「インビクタス/負けざる者たち」(2月5日公開)について、日刊スポーツの取材に応じた。南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領がラグビーW杯開催を通して国民を団結させた実話を基にした作品で、監督としては30作目。18日(日本時間)ロサンゼルスで授賞式が行われるゴールデングローブ賞には、監督賞などでノミネートされた。主演モーガン・フリーマン、マット・デイモンも同監督について語った。【ロサンゼルス=千歳香奈子通信員】

 クッキーと緑茶を手に現れたイーストウッド監督は、リラックスした様子で新作を語り始めた。きっかけは、主演フリーマンからの電話だったという。

 「モーガンから『君の役はないけど、ぜひ読んでもらいたい脚本がある』と言われたんだ。マンデラ元大統領には興味があったし、ラグビーチームを国の団結に利用した物語にひかれた。ラグビー映画ではなく、彼のリーダーシップに焦点が当てられていて、今までにやったことのないタイプの話だと思った」。

 95年に南アフリカで開催されたラグビーW杯。マンデラ元大統領が大会を政治に活用した事実はあまり知られていない。撮影中にはケープタウンで同元大統領と面会し、演じるフリーマンの演出に役立てた。

 「作品についてはほとんど話さなかったんだけど、2人を見比べて、じっくり観察したよ。モーガンにも同じような存在感、カリスマ性があり、マンデラ元大統領を演じるにはぴったりだと思った」。

 「恐怖のメロディ」(71年)で監督デビューし、記念すべき30作品目。日本軍の軍人を描いた「硫黄島からの手紙」(06年)では異なる文化や言葉の中で製作、70歳を超えても精力的に創作活動を続けている。

 「原動力はいつも仕事を楽しんでいること。俳優や文化、毎回新しいことを学ぶのは本当に楽しい」。

 しかし、俳優としては08年の前作「グラン・トリノ」を最後に引退するのでは、と言われている。しかし「何が起こるか分からない」と含みを持たせた。

 「今は、自分が役者をやるための脚本は探していない。私の年の俳優が演じるキャラクターが、今のハリウッドにはないから。でも、引退という言葉は使わないようにしている。演じたいと思う役があれば、戻ってくることもあるかもしれないから」。

 ゴールデングローブ賞監督賞のノミネートは5回目、受賞すれば「バード」「許されざる者」「ミリオンダラー・ベイビー」に次いで4回目。エリア・カザン監督の最多受賞回数に並ぶ。「何が起こるか分からない」快挙にも期待だ。