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河瀬監督カンヌグランプリ!2番目の栄誉

 【カンヌ28日=松田秀彦】カンヌ映画祭の授賞式が27日(日本時間28日未明)に行われ、コンペティション部門に選出された河瀬直美監督(37)の「殯(もがり)の森」が、パルムドール(最高賞)に次ぐグランプリ(審査員特別大賞)を獲得した。日本人監督の同賞受賞は17年ぶり。スピーチでは「映画を作り続けてきてよかった」と目を潤ませながら賞状を掲げた。

 97年に初監督作「萌の朱雀」で同映画祭カメラドール(新人監督賞)を最年少で受賞。同映画のプロデューサーと結婚するが01年に離婚。自分が生まれる前に両親が離婚し、望まれた子供ではなかったと考える心の空虚さを埋めたのが映画製作だったが、離婚による喪失感で、引退が頭をよぎった。受賞後の重圧も「めちゃめちゃ感じた」。「あの賞がなかったら結婚も離婚もなかった」と後ろ向きな考えも浮かんだ。

 転機は欧州各国の映画祭参加と再婚だった。訪れたこともない国で作品が上映されている。足を運ぶと映画監督として自分を認めてくれていると実感した。04年に放送関係者と再婚、長男を出産し「徐々に変わってきたかも知れません」。

 「殯の森」は4年ぶりの長編。認知症を患う養母(92)の介護、出産の経験を踏まえて脚本を執筆。掛け替えのない人と死別し喪失感を抱える老人と女性の心の通い合い、生と死の接点を描いた。昨夏、故郷の奈良県内の山間部で撮影。日仏合作の試みにも挑戦、苦労も重ねた。授賞式では「映画作りは本当に大変で人生に似て、困難、混乱がいっぱいある。そんな時、だれかの思い、亡くなった人の面影など目に見えないものに心の支えを見つけ、たった1人で生きていく。そういう映画を評価してくれてありがとう。この世界は素晴らしいと思います」と語った。

 新人監督賞から10年。「自分にしか作ることができない地に足ついた映画を撮っていきたい」。カンヌ2度目の栄冠は静かに受け止めた。

[2007年5月29日7時53分 紙面から]

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