スポーツ青年にチア・リーダー、ガリ勉君に地味な文学少女…米国のテレビドラマや映画で見かける若者はほとんどがパターン化されている。「生身の17歳」を描き、その複雑な胸の内をのぞいたような、そんな気になれる作品は意外と無かったように思う。

 22日公開の「スウィート17モンスター」は生身の、それもまさに今の実像を感じさせてくれる。脚本、監督のケリー・フレモン・クレイグは35歳と若い。生き生きとしたキャラクターを作りあげるために「現代のティーンエージャー」の取材に4年を費やしたという。

 主人公のネイディーンは内気というわけではないが、子どもの頃から周囲になじめない。理解者の父は早死にし、しゃくし定規な母親とはうまくいかず、優等生の兄は疎ましい。

 それでも、何でも話せる親友のクリスタがいるし、そっけないようで実はよく見ていてくれている教師のブルーナーがいる。

 が、そのクリスタがよりによって兄と恋仲になってしまい…。

 はたから見れば「よくあること」が当人にとっては大事件。振り返れば苦い思い出で済むことでも、その時は死にたくなるほど落ち込んでしまう。そんな思春期の痛々しさがひしひしと伝わってくる。喜怒哀楽の振れ幅にリアル感があって、国も時代も超えた10代のあるある感が染みてくる。

 ネイディーン役のへイリー・スタインフェルドは14歳のときに「トゥルー・グリット」(10年)でアカデミー助演女優賞にノミネート。13年には米タイム誌の「最も影響力のある16人のティーン」の1人に選ばれている。豊かな表情、とくにふくれっ面のリアリティーはさすがと思わせる。

 クリスタ役のへイリー・ルー・リチャードソンは対照的にキレイで明るいアメリカンガールを体現したような人だ。M・ナイト・シャマラン監督の新作「スプリット」(5月12日公開)でもそのキャラを生かして好演している。

 設定は全然違うが、2人のコントラストは、「危険な情事」(87年)でマイケル・ダグラスをはさんで競演した個性派グレン・クローズと正統派アン・アーチャーに近いところがある。

 好対照の女性2人を始めとして、この作品はキャスティングに負うところも大きい。教師役のウディ・ハレルソンも大作から小品まで、出れば必ず存在感を示す人だが、今回は「そっけないけれど実は洞察力があって心は温かい」という人物像をしっかり作りあげている。

 セリフの端々に「今どき」があふれかえっているが、その周囲に年配者にも見えやすい対比や人物設定が据えられているところがこの作品のミソである。脚本が練られているのだ。

 現代の17歳が「屈折」で語られるなら、まだまだ若い現代の中高年は「純愛」で語られる。これも今風作品だと思ったのが、仏映画「アムール、愛の法廷」(5月13日公開)だ。

 厳しい判決で知られる地方裁判所の裁判長。カゼ気味でいつも以上に不機嫌なある日の法廷で、陪審員の中にかつて思いを寄せた女性がいるのに気付く。

 彼女は医者で数年前に患者として訪れた裁判長に優しく接したことがある。彼女にとっては当たり前の医療行為だったのだが、裁判長は「好意」と誤解している。

 裁判長は妻と離婚手続きに入っていて、女医には娘がいるものの、夫とは別れている。数日間にわたる裁判の合間、こっそりと会ううちに誤解は本物の好意に変わっていく。

 裁判長は、生き生きと裁判を仕切り、いつもと違って被告人の声にもしっかり耳を傾ける。ようは彼女の前でいいところを見せているわけで、彼らの青春時代に上映された往年のボーイ・ミーツ・ガール映画を地でいっている。

 一方で、この過程で厳格に見えた裁判長が優しい心根をのぞかせたり、おませな娘が母親をけしかけたり…異色の法廷ラブストーリーは中高年の人間としての奥行きも映し出してドラマを厚くする。

 メガホンは「大統領の料理人」(13年)のクリスチャン・ヴァンサン監督。裁判長には実力派ファブリス・ルキーニ、女医にはデンマークを代表する女優シセ・バベッド・クヌッセンと出演者も巧者揃いだ。

 17歳の屈折と中高年の純情-いずれも小品ということになるのだろうが、ともに「今」をしっかりとらえた作品だと思う。【相原斎】


「スウィート17モンスターズ」の1場面 (C)MMXVI STX Productions, LLC. All Rights Reserved.
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